
水禽類の為の飼育場には普通は1mくらいの高さの粗目の仕切りをするだけで良いのです。この中に池と丘を作ります。犬とか狐は此の金網を登れないのですが、猫等は金網をよじ登り又は飛び越えますから、仕切りの高さは2mとし、且つ上端で張り出しをしておきます。
また、上端と下端に電流を通ずるのも良いアイデアです。下端は土中に30cmは差し込んでおくと安全です。非常に広い飼育場では、一番外側のみを高い柵とし、内部の区切りは低い仕切りで間に合います。
水鳥類は日光浴を喜びます。陸上は日当たりのよい乾燥した処にします。どうしても地上が乾燥しない時は木製の日光浴台を作っておきます。鴨類は此の上で日光浴をします。
水鳥類は金網の中では飼わず、普通、翼を切って放し飼いにします。また、他種多数を同一の囲いの中で飼います。この場合にどの位の密度で飼うべきかが問題ですが、フランスのクレールに理想的な飼育場を作っておられるデラクール博士の意見として、1.200坪の水に小さい雁の10ペアと鴨の40ペアを入れるのが適当で、此れ以上過密になると交雑種が出来ると言っておられます。
また、交雑種の発生を避けるためには近縁の鳥を同居させない事が大切です。又、闘争性の強い鳥は喧嘩ばかりをして産卵、育雛に興味を持たなくなり、強者は弱者を殺し、大切な鳥を失う結果になりますからこのような鳥は1ペアずつ別々の禽舎で飼います。
ツクシ雁、ロウバシ雁、エジプト雁、ツクシガモ等が此の類です。
水鳥を飼う池の深さは、そう深い必要はなく、潜水鴨類には1m以下、水面鴨類には30cm~50cmで良いです。池の側壁は垂直ではなく、ゆるやかな傾斜をなして、中央に深くなっておれば鴨が池から陸に上がるのに都合が良いわけです。
また、水深30cm位はセメント又は石畳にしておけば、泥んこになることはありません。川、即ち流水が囲いを通して流れている場合は、此の水を堰き止めて池を作ることは容易で、この場合は水面の高さを一定に保つ事ができます。
池水を横切って金網を張る必要がある時は池の底から張っておかないと鳥は下を潜って、一方の池から他方の池へ移ります。鳥を飼っておりますと、外敵に襲われて死なす事が起こります。外敵としては、犬、狐、猫、イタチ、テン、ネズミ、カラス、猛禽類等です。中でもネズミが大敵で、鳥の餌や卵、雛などに傷害を与えますから殺鼠剤または罠で最後の1匹まで駆除しておかなければなりません。
オシドリ、アメリカオシドリ等小型の鴨は翼を切らずに1ペアずつ小さい禽舎で、また小さい池で飼います。巣箱を天井付近に吊るしておきますと、毎年産卵育雛を繰り返します。
また移動性のない鳥で、非常に広い池があれば、翼を切らずに放し飼いしておきますと池上を飛ぶ楽しい光景が見られますが、大抵の鳥は翼を永久切除して放し飼いにします。なお、換羽期には翼骨を切る作法をしてないけません。
普通水鳥は水上で交尾をするのです。だから池を作っておかないと有精卵を得る事ができません。しかし、ハワイ雁とか南半球のツクシ雁、ロウバシ雁、エジプト雁、オリノコ雁等は陸上ででも交尾をしますから広い池を必要とせず、水浴びの為に小さい池を用意するだけで良いのです。
池を作るセメントは砂2にセメント1の割合で混ぜ、且つ砂はふるいを通した細砂を使用して、相当厚く壁を塗らないと重い水の重量に耐えられません。且つセメント防水材を入れます。また塗りとして白色セメントに好きな色に着色したものを用いておくと美しく、又水漏れもありません。
寒気が特に厳しく、雪が積もる地方では池水畔に覆いのある小屋を作り、床面に藁を沢山敷いて夜間は小屋の中に収容します。また暑熱の厳しい地方では、日よけの為に池の周辺に樹木を植えます。そうして池の水は一週に一度新しいものと入れ替えをします。
また雁は一般に草食性ですから、雁の飼育場には沢山の草が生えていることが望ましいのです。人間が孵化した鳥は広い新飼育場へ移しても直ぐに、或いは数日のうちには此の飼育場に良く慣れて新しい餌を食べます。
処が、野外で捕獲した鳥を広い飼育場へ入れたのでは、逃げ隠れ廻り餌を食べず、直ぐ死んでしまいます。此れを防ぐために広い飼育場に接続して、数平方mの小さい飼育場を作っておいて荒鳥は最初此処に収容して、慣れてから広い飼育場へ移さなければなりません。
夏と冬と別々の飼育場を作るのも大変良いです。例えば、フラミンゴなど寒気に弱いものは冬は建造物の中の暖房された処で飼い、春になって暖かくなった時、戸外の飼育場へ移します。
凡て熱帯鳥はこうして飼うと、間違いありません。雉類は一般に翼を切らないで、禽舎の中で飼います。此の方法が外敵から守るにはよく、また鳥を逃がす恐れもなく安全な飼い方です。