骨は堅牢な組織ですが、その代謝活性は非常に高度です。幼畜の骨は身体の成長とともに発育し、また成長後もたえず新陳代謝をくりかえしています。
骨の栄養障害は骨形成の力あるいは方向に生じた異常を反映するものであって、とくにカルシウム、燐、蛋白質、ビタミン、内分泌などと関係が深い。
骨に異常が発生すれば骨折、関節障害などをおこし、そのため跛行や歯牙疾患などが現れることが多く、外科疾患に関連するところが少なくありません。
骨粗鬆症または骨多孔症および骨萎縮
骨には種々の栄養障害(osteodystrophy)が発生しますがそれらの精確な判別には困難が多い。
骨粗鬆症は骨軟化症としばしば合併するものですが、しかし両者は明らかに区別されるものです。骨粗鬆症は骨の有機性基質(organic matrix)の形成不全または欠如によっておこり、骨の石灰化(calcification or mineralization)はよく行われている。
これに対して骨軟化症では、形成された基質の石灰化の不全または欠如があります。
骨粗鬆症あるいは骨萎縮は、種々の非特異的な原因によって発現するもので、食餌性、老年性、廃用性などに区分されます。
カルシウムおよび燐の代謝障害よりも、むしろ組織の代謝障害がおこり、骨は多孔で軽く、脆くて容易に骨折します。
骨組織の吸収(破骨細胞osteoclastによる)は正常に営まれていますが、造成機転(骨芽細胞osteoblastによる)が著しく減退しているため、皮質も海綿質も進行性に減量する。
皮質は薄く粗鬆になり、髄腔は広くなる。骨髄は拡張し、骨質吸収の結果として骨端部にまで拡がる。
廃用性の例(麻痺、機械的固定など)を除く骨粗鬆症は全身性の疾患であって、病機の進行は緩慢です。
家畜における発生はきわめて稀れですが、長期にわたる栄養不足の際には、同化作用減退の結果として本症が発生します。
羊では老年性骨粗鬆症が発生するといわれています。
活動性の卵巣嚢腫を有する牛では、長期間のエストロジェンの過剰分泌が原因となって骨粗鬆症が発生し、骨折がおこりやすいと考えられています。