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乳房炎 ~ 治療(菌の薬剤感受性)


乳房炎の治療



乳房炎の治療には、病性の急性、慢性のちがい、乳房の病変の強さ、全身症状の程度などに応じて、それぞれ適切な処置を選定しなければなりません。


牛の乳房炎の大多数は細菌の感染が原因になっておこるから化学療法が広く普及していますが、治療開始前にミルクの細菌検査を行って、原因菌を明らかにし、また菌の薬剤感受性を調べることは非常に大切です。


発熱、元気沈衰、食欲不振など全身症状が著しい急性症の場合には、中毒血症、敗血症などが疑われますから、化学療法薬を全身的に投与するほか、ブドウ糖、ビタミン、心臓血管薬、電解質溶液などによる支持療法が必要です。


特に甚急性の症例では、救命がまず第一です。


乳房の急激な腫脹と疼痛に対しては、乳房の湿布、消炎剤塗布などの対症療法が行われますが、特に冷水の灌注による乳房の冷却が推奨されている。


乳房内に膿瘍が形成された時には、全身的または局所的(乳房内)に投与した薬の浸透が困難なため、穿刺あるいは乳頭切除によって排膿させることがあります。


また壊死、壊疽が明らかな時は、他の分房への波及を防ぎ、あるいは貴重な資質をもった牛を保存するため、手術によって片側または全部の分房を切除する必要に迫られる。


しかし感染がおこった乳房自体に対する直接的な治療の主役は、抗生物質、サルファ剤、フラシンなどの化学療法薬です。


これらの薬は、散発する急性乳房炎を緊急に治療するために使用される場合と、慢性乳房炎の原因である病原菌の感染を除去する目的で適用される場合とがありますが、いずれも獣医師によって実施されなければならない。


畜主はしばしば急性症の治療を試みて失敗し、治療の適期を逃す。


牛の体温が39.5℃を越えたならば畜主はすぐに獣医師を呼ぶべきであり、獣医師が診察する前に乳房内に薬を注入することは診断を困難ないし不可能にする。


精密検査の結果を待つ時間的余裕のない場合の処置の決定は、獣医師にゆだねられる。


一方、慢性症の治療は、時に畜主にまかすことがあるが、薬の薬理作用と無菌的操作について基本的知識のない者が行う処置は、かえって重症の乳房炎を招来する結果になります。


乳頭管を経由して薬を直接乳房内に注入する方法が多用されるが、この薬物療法にもいくつかの問題点がある。

菌の薬剤感受性



これはin vitroの感受性テストによって明らかになりますが、その結果と実際に乳房内に注入した時の治療効果とが一致しない場合が少なくない。


これは、感染菌の菌株による感受性の差、組織の病変による薬の浸透困難、組織の防衛反応の減退などの影響によります。


乳房炎をおこすレンサ球菌は、今日なおペニシリンに対する耐性の獲得が稀れで、感受性が高い。黄色ブドウ球菌のペニシリン耐性は、人の病気の場合ほどには問題になっていないが、菌株による感受性の差、および乳腺実質内に小さい病巣を形成してそこに薬が到達しにくい点に、むしろ問題がある。


大腸菌群には、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、サルファ剤などが有効とされていますが、感受性は菌、菌株によって異なる。


コリネバクテリウムは抗生物質の多くに感受性がありますが、それらの効果は濃厚な膿によって妨げられる。緑膿菌には自然耐性株が多い。


マイコプラズマ感染に対してはマクロライド系(たとえばタイロシン)が選ばれるが、治療成績はかならずしも良好ではない。


真菌に対しては細菌に対して有効な抗生物質は効果がなく、ナイスタチンなどが使用されますが、あまり満足できる結果は得られていない。


牛の乳房炎では、しばしば菌の混合感染がおこるので、治療薬には数種の薬をまぜたものが多い。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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