鉛 Lead Pb ~ 治療法

ビーブラスト・テキスト


鉛中毒・治療法



鉛の解毒薬は硫酸マグネシウム、芒硝、などの内用で、これは鉛を不溶性の硫化鉛として沈澱させる他、下剤として働くので急性症には特に適当です。


鉛中毒時の特別な療法は石灰塩の応用です。前述の通り血中に入った鉛分は石灰と共に骨質内に沈着して流血中から消失し、中毒症状を現わしませんが若し石灰の摂取が少いか叉は体液がアチドーゼを起すような場合は鉛が再び骨質内から移動してくる。


この意味から石灰塩の大量を与えて一時無害な状態にします。この目的に経口的には乳酸カルシウム、注射用としては静脈内に2~10%塩化カルシウムを注入します。


然し蓄積された鉛も再び血流中に現れるから、同時に次の療法を併用して除鉛しなければなりません。


最近の報告によると鉛中毒にCa EDTA(Calcium disodium ethylenediaminetetraacetate)が効がよく、牛にブドウ糖食塩液500ccに本剤を6g溶解し皮下または静脈内注射します。


但し本剤の皮下注射は家畜が疼痛を示すので、徐々に静注することがよい。


また、犬に対しては日量0.5gを4日間1シリーズとして注射します。すなわち第1日目は0.5gをブドウ糖食塩液250ccに溶解して皮下注射し、翌日からは用量を2分し、Ca EDTA 0.25gをアミノ酸液125ccに加えて静注し、他のCaEDTA 0.25gを生理食塩水10ccに解かして皮下注射し、7日を経てこれを繰返します。


チオ硫酸ナトリウム(ハイポ)の応用は他の重金属中毒の場合と同様で効果が多い。本剤の薬理は未だ不明な点が多いが、硫黄は重金属と化合して復塩を作り無害な形として腎から排泄されるものと考えられ、チオ硫酸ナトリウムは硫黄化合物中最も無害なものであるから、臨床的に応用されるに至ったものです。


その他卵白、牛乳、粘液などの内用もよい。


慢性症に対しては直ちに原因を除き沃度剤の内服によって内臓に沈着した鉛分を移動させ、体外排泄を速かにし、皮膚に付着した鉛分は硫化カリ浴により無害とします。


その他最初に豚、犬、猫等には吐剤を与えて毒物の排除を望み、次で下剤を内用させることは他の中毒の療法と同じです。


また疝痛発作、運動および興奮にはモルヒネ剤、抱水クロラール、臭素加里などで対症的に処置し、麻痺にはカンファー、酒精、アトロピン、エーテル等を用いる。


なお馬はこの他に呼吸困難に対し気管截開術を施す場合があります。


銅中毒は飼料にモリブデンを添加すると予防できます。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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