鉛・薬理作用
経口的に摂取された鉛化合物は、胃腸より吸収され門脈に入り一旦肝臓に抑留され他は腎および筋肉に沈着し徐々に血中に移行し、次で石灰と共に骨質内に沈着します。
可溶性鉛塩類は蛋白質と化合して不溶解性の蛋白化鉛を作り、且つ組織液の食塩と化合して塩化鉛の沈澱を生ずる故、その作用は表在性で収斂作用を現わします。
然し濃厚な液は強い反応を伴い炎症と腐蝕作用を呈し、特に硝酸塩は腐蝕力が強い。これは蛋白質と化合して硝酸を遊離するからです。
従って鉛塩の大量を内服すれば腐食性急性胃腸炎を起します。
消化器内で沈澱した蛋白化鉛は再び蛋白質溶液中に溶解され比較的徐々に吸収され、腸筋肉中心神経系を侵します。
腸の変状は先ず劇しい疝痛と下痢が来る。これは腸の運動神経節が刺戟され蠕動亢進し痙攣性収縮を来すためで、アトロピンを与えると忽ち消失するこの症状は犬猫に著明です。
筋肉の変状は軀幹および心筋の麻痺で、動物は心臓麻痺で斃れます。中心神経系の変状は初め痙攣で、終りには運動中枢の麻痺です。
体内に吸収された鉛は、尿、唾液、乳汁ならびに腸より排泄されますが、緩徐ですから、体内に蓄積する量は頗るおおい。
而してヨードカリを内服させると尿中の鉛量が増加します。
鉛塩の液体並びに軟硬膏は湿疹、火傷、褥瘡、表皮剥離、分泌の多い潰瘍などに外用すれば蛋白化鉛の被膜を生じ、創面を乾固するから湿潤の甚しいもの、化膿した皮膚を速かに治癒させます。
収斂性消炎剤として20~200倍溶液を外用し稀には止泄剤として内用することがあります。
その用量は大動物2.0~10.0、中動物0.2~1.0、小動物0.01~0.2ですが、反芻獣には禁忌です。
鉛酢2分、パラフィン軟膏19分より作る。
等分の樹油、豚脂および酸化鉛に少量の水を加え熱して作る。
鉛硬膏1分、オレフ油1分を溶和して作る。
慢性湿潤性湿疹に効がある。