蹄葉炎(laminitis, founder, podophyllitis) ~ 原因・症状・治療法

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蹄葉炎とは、肉壁(真皮葉)のび漫性無菌性炎症で、多くは両前肢に発し、時には全四肢または両後肢に発生することがあり、これによって、しばしば蹄の変形をきたします。

蹄葉炎の原因



平蹄・傾蹄・彎蹄・狭窄蹄および消化障害をおこしやすい馬は、本症に罹りやすい。


運動不足の馬に濃厚飼料(特に大麦・小麦)を飽食させた場合、あるいは放馬盗食後に消化障害をおこし、次いで腸内毒素が血中に吸収されて、血液分布に変調をきたし、その結果、蹄充血あるいは蹄葉炎を発生することが多い(食餌性蹄葉炎grain founder)。


蹄鉄の改装を怠ったり、また蹄機を阻害し、あるいは蹄知覚部に刺激を加えるような装蹄は、本症発生の誘因になります。


長途の輸送で、一肢が帯痛性疾患に罹っている場合、対側肢が過大な負重を受けるために、その肢蹄は本症を発しやすい(負重性蹄葉炎car founder)。


分娩によって体力が消耗し、これに消化障害が伴って発生することがあります(産蓐性蹄葉炎colt founder)。


感冒・胸疫・流行性感冒の経過中、あるいは過労によって体力が消耗し、同様に蹄葉炎をおこす場合がある(転移性蹄葉炎metastatic founder)。


また大量の冷水を飲み(water founder)、青草を飽食して発するもの(grass founder)、硬地上の長時間の激労によるもの(road founder)などもあるといわれています。


近年は蹄葉炎の誘起物質としてヒスタミンをあげる報告が少なくない。

蹄葉炎の症状



急性症は知覚部(肉壁)の充血あるいは無菌性炎症にはじまり、局所に激痛を伴うため、特異な肢勢と歩様を現します。


すなわち両前蹄の場合は、患肢を前方に出して蹄尖部を浮かし、蹄踵で負重し、同時に両後肢を前方に踏み込み前肢の負担を軽減します。


しかしこの肢勢は長く維持できないため、前肢へ体重を移そうとしますが、たちまち激痛を感じて、再びもとの肢勢にかえます。


両後蹄の場合は、前肢を後踏肢勢に位置し、頭を下げて体重を前軀に移し、患肢は前方に深く踏み込み蹄尖を浮かして蹄踵で軽く負重するようにつとめる。


このほか、臨床所見としては、体温上昇・戦慄・発汗・脈拍および呼吸数の増加・可視粘膜の充血などを認め、渇を訴え、苦痛の相貌を示します。


局所症状は、蹄温の増加(前壁に著しい)と、槌打および鉗圧に対する疼痛反応が顕著で、強い指動脈拍動が認められます。


本性が慢性に移行するときは、知覚部の滲出機転あるいは出血によって真皮葉と表皮葉が次第に分離し、前壁の蹄冠部が陥没するとともに、蹄骨尖端の沈下(蹄骨の変位または回転)が認められます。


また蹄底は膨隆し、白帯は幅が広く脆弱となり、蹄踵は高く蹄前壁は凹彎して、いわゆる蕪蹄pumiced footを形成し、時には蹄骨の先端が蹄底に穿孔します。


この場合、前壁に密で蹄踵壁に粗な異常蹄輪が現れます。

蹄葉炎の治療法



急性症はまず安静にし、蹄を冷却します(冷水、氷水)。抗ヒスタミン剤の投与は有効です。


減食させ、必要に応じて下剤を与えます。利尿剤、フェニルブタゾンがしばしば用いられます。自家血(50~200ml、筋肉内)または瀉血(約4l)療法が行われます。


また蹄前壁に知覚部に達する縦溝を設けることもあります。


数日間冷却した後は脚浴を行います。


慢性で蹄骨沈下の傾向があるものには、鉄板蹄鉄を装します。


蕪蹄に対しては、蹄踵を削切し、蹄尖部は鑪削して蹄形を修正し、広頭連尾蹄鉄または鉄板蹄鉄を装着して蹄踵を保護します。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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