
雉類では産卵期の早いカラヤマドリ、サンケイ等は3月から産卵を始めますが、一般には4月から始まり、5月がピークで、6月には下火となりその代わりどんどん雛が孵化してきます。しかし、尚、7月、8月、9月と産卵は続きます。
尾長雉に関しては、10月中旬頃まで産卵を続けて卵も100個を超えることがあります。孔雀は若鳥ですと9月中旬迄産卵いたします。また、アメリカウズラは9月初めまで産卵をし、しかも最後の1個まで有精卵になる事が多いのですが、一般には雉類では有精卵は20個が最高で、それ以後の卵は無精となりますから、飼料を加減、つまり蛋白質含有量を減らしてなるべく産卵を抑制し、無精卵を産まないようにしないと鳥があ短命となります。
禽舎内に雌の隠れ場所を作り、禽舎を広く取ります。こうすれば1クールの産卵(8個位)の後、雌は自家抱卵を始めます。やがて雛は孵るでしょう。この雛は両親に育てさせることも出来るし、また雛を親から分離して別途育雛器で育て上げることもできます。
しかし、此の方法を推奨できないのは、抱卵以後、雌は卵を産まなくなり且つ寒くて地面が湿っている場合また孵化の際に大雨が降ったりしますと雛は冷えて死ぬ事があり、そればかりか大切な親雌までも疲れ切って死んでしまうことがあります。
此の方法よりも、産卵と同時に卵を禽舎から取り去り。少し面倒ですが産卵毎に飼育者が集卵しこれを人工孵化します。こうすれば雌は補充産卵で卵を沢山産みますし、また雛もより強く健康に育てることができます。
しかし、ここで問題になるのが近親繁殖です。
近親繁殖から兄弟姉妹、親子間の交配ですが、これを繰り返すと鳥は有精卵を産まなかったり産んでも数が少ないとか又、孵化寸前に雛が卵殻内で死ぬとか、無事孵化しても弱い雛だったり指曲がりの雛が生まれたりとかします。
そういうわけでアメリカでは無関係のペアを作るということが大変重要視されてきました。これは動物園と動物園、または動物園と個人というように雛の交換をすることによって目的を果たせます。
また、沢山鳥がある場合ですと系統繁殖を行う為に、鳥を2群あるいは4群に分けて繁殖して、5代目位にこの両軍の間に交配を行い品種改良を行うこともできます。
次に、第二の問題は種族を純血な状態に保つ事が大切で、雑種を増やしてはなりません。
これが為には、よく似ております雌を間違わないようにすることが大切です。雄に対して適当な雌がなかった場合、便宣、他鳥の雌を配してペアとして売られる場合があり、このようなことから雑種が生じます。
鳥にも好き嫌いがあって雌雄1羽ずつで、何時も良いペアが得られるとは限りません。もし非常に良いペアであることが分かった場合は、良い有精卵を産まなくなるまで其のままにしておき、途中で切り離すべきではありません。
つがわす事の一番困難な鳥は、ヤマドリ、ミカド雉、カラヤマドリであり、これらの鳥では雌を殺したりします。また、老鳥は若鳥よりつがわす事が難しいです。
普段は大人しく仲の良いペアにみえる鳥でも、一瞬のうちに殺す場合がありますので、雌雄を別にして飼うのが安全です。1つの禽舎を2つに中央の仕切りで分けて、中央仕切りに扉を付けておきます。
どの雉でも、卵は夕暮れに産み交尾は早朝で、多くは未だ人間は寝ている間に行っているものです。なので、雌が産卵をした日に中央の扉を開いて雌雄が合流できるようにします。
翌朝には交尾をするのでしょうから、翌午後には雌雄を分離して、中央の扉を閉ざします。こうすれば雌がその夕暮れまたは翌日の夕方に産卵をするときは雌だけ1羽で安心して産座に就く事ができます。
こうしておかないと、産座に就いている間に雄に突き殺される恐れがあり、また卵も雄に食べられることもあります。一回の交尾によって1週間は有精卵を産みます。したがって、雌雄の交尾は1週間に1度行えば良いです。
しかし、このような鳥から有精卵を得る事は一般に難しいものだと言われています。最近の報告によりますと、前記のヤマドリ、ミカド雉、カラヤマドリ等は沢山雛が得られるようになり、繁殖法が確立されたようとしております。
繁殖に関する限り、飼育法が適切である事が大切であることは言うまでもありませんが、それにも増して大切な事は繁殖に必要な優秀な種親を探す事が大切です。
また、雄1羽に雌を何羽を配すると良いかという事は種類によって異なる事は勿論ですが、これについては下記を参考にして下さい。
一夫多妻の方が有精卵を同一の場所から多く得られるのですから、それが可能ならばそうすべきです。雉類は一般に喧嘩好きです。したがって1つの禽舎には1羽の雄より多くを置くべきではありません。
2羽とか3羽の雄を同一禽舎に置けば、喧嘩になり弱い方は殺されます。また、1羽の雄に2羽の雌という配置の場合には雌同士の喧嘩が起こり、且つ1羽の雌のみが有精卵を産み、他は無精卵を産むようになりますから、喧嘩する場合は1羽の雄を別々の禽舎で1日交替で雌と同居させるのが良いです。
長尾のヤマドリ、ミカド雉、尾長雉等は雄1に対して雌は3羽、高麗雉、日本雉は1対6迄可能です。また、金鶏、銀鶏等は、1対2、ミミ雉、ニジ雉、ジュケイ、セイラン、腰赤雉、ハッカン等は、1対1で好結果が得られます。インドクジャクは1対5が可能です。
オス同士を止むお得ず同一禽舎に入れる必要がある時は、全然初めての禽舎へ同時に入れると、喧嘩は余程避け得られます。禽舎が互いに接続して長屋になっている場合は、繁殖期にはその境界に互いに見えないように不透明なカーテンを張っておく必要があります。
一方の禽舎にいる雄が、これに接する他の禽舎の雌を望見出来る状態では、この雄は自分の禽舎にいる雌よりも他の禽舎の方の雌に求婚する意欲が強く働き、結果は自分の方の雌は無精卵を産む結果を生じます。
繁殖期の間は、禽舎内には雄が雌を殺さないように避難場所が欲しいのです。それには単に棲り木を設置するだけでもだいぶ違います。さらに一隅に藪を作り、此処を雌の隠れ場所とします。
こうすれば雌が所かまわず産卵せず、此の隠れ場で何時も産卵するようになり、従って雄に卵を突かれて割れる率も少なくなります。下は卵が割れぬように砂地にしておく必要があります。
自家抱卵をさせない限り、多くの場合そうなのですが、産卵毎に卵を人間が捕集して貯蔵します。貯蔵には鈍端を上にして、45°の角度で籾殻、砂の中を枕としておいても良いです。
貯蔵に日数は2週間は大丈夫のようですが、普通は1週間毎に温卵を始める方が確実です。湿度の高い、なるべく涼しい処に保存します。貯蔵中も1日1回位卵を転卵させれば尚、宜しいかと思います。
この卵は、矮鶏、バンタム、烏骨鶏等を仮母としてまたは電気孵卵器に入れて孵化します。余談ですが、雉類は大抵大地の窪みに産卵しますが、稀に木の枝などの高処に産卵するものもいます。
ジュケイ、セイラン、小孔雀等には高処に産卵箱(底の浅い箱で天井は開放の物)を置くのも良いです。