ジャージー(Jersey)

ジャージー(Jersey)
ジャージー(Jersey)



英仏海峡群島のジャージー島(イギリス領)の原産の乳用牛。この島は長さ16km、幅10kmの小島で、北から南にゆるく傾斜し、海流の影響で気温は温和です。


農業が島の唯一の産業ですが、小規模で果樹園芸が主です。


早掘り馬鈴薯、トマトの温室栽培などが盛んです。他方古くから乳牛飼育もさかんで、1haあたり1頭ぐらいの割合で、ジャージーを飼育しています。


この種畜としての輸出は島の大きな産業の1つです。


雨量も適度で、草が年中あり、放牧も年中可能です。草のほかに根菜類を給与するぐらいで、濃厚飼料はほとんど与えない。


このような原産地の環境の下で作出されたジャージーであり、その小格であること、性質の従順なこと、草の利用性の高いことなど、すべて改良に力を入れられた点は、ジャージー島の農業環境に通じるものがあります。


この品種の成立には、フランスの本島対岸地方に飼われているブルトン(Bretonne)が基礎となり、それに1部ノルマン(Normande)が交雑されたと言われています。


約600年間他品種との交雑をせず、もっぱら純粋繁殖を行いました。


その結果、当然、近親繁殖もされたことと思われます。現在のジャージーの体格、資質、能力の斉一度の高いのはそのためです。


もっともその間、一定の目標を立てて選抜淘汰を繰り返してきたこともあずかって大いに力がありました。1789年以来、島外から牛の輸入は法律で禁止しています。


1866年以来、血統登録が行われ、高等登録の制度もあります。


乳用能力の検定は、あまり普及していません。すべてにおいて斉一度も高く、また体型資質の良否と泌乳能力とは密接に平行するので、能力検定の必要性があまり大きくないということも一応推察されます。


少なくともジャージー島の育種家はそう確信しているようです。


したがって、彼らは表型をいまでも強く重んじているらしい。古来改良のポイントはバター生産にあったので乳量は多くないが、乳脂肪率はきわめて高い。


これらの改良の実は血統を重んじた近親繁殖あるいは系統繁殖によったものですが、ジャージーの場合、とくに種雄牛(父系)を主体に考えて交配していったようです。

ジャージーの詳細



毛色は、白に近い淡褐色から黒がちな濃褐色まで、さまざまです。


いずれにしても一枚毛で、斑ではない。一般に体の下部や四肢の内側の色が淡くまた雄は雌より黒がちです。鼻鏡が黒く、口先の周囲を白い淡色の輪がとりまいています。


かつてイギリスで、ジャージーの毛色に偏見が現れ、そのため泌乳能力を低下させたことがあります。毛色に対する好みは実用的な能力を害さない程度に許されるべきものでしょう。


体は乳用牛のうちで最小のもので、体高は成雌120~125cm、成雄130~145cmです。


体重は、成雌350~450kg、成雄550~700kgです。一般に、ジャージー島のものは、ことに小型であり、アメリカのジャージーはやや大型です。


これは繁殖に際し、そのように選抜していった結果です。


近年本邦に輸入されたオーストラリアおよびニュージーランドのものも、一般にアメリカのものに比べると小型です。


体型はやせ型で、かどばり、前方、側方、上方、後上方からみて、クサビ型を呈しています。いわゆる古くからいっている理想的な乳用タイプの牛です。


したがって、乳用牛タイプを覚えるには好都合の体型であり、以前は初心者の審査は初めジャージーを用いて練習したというくらいです。


肩幅、背幅がうすく、き甲が高く、骨ばっているのが目立つ。


胸は浅い、顔は短く、眼が大きく側方に出て、両眼間が深く窪んでおり横顔がしゃくれている。顔は実にかわいらしい。肋はむしろ平たく、腰は長いが幅は狭い。


尻は水平で、腿はうすく、股間は広い。


乳房は長方形で、その形状が実によく、付着も広く、4つの乳区が大体均等に発達している。その質もよろしい。乳房のよいのは本種の大きな特色です。

能力



本種は乳量よりは乳質の優れている点が特色で、乳脂率と乳の全固形分含量がとくに大です。乳脂率は、4.5~6.5%(平均5.14%)で、乳用牛のうちでは、最高です。


全固形分は平均、14.9%で、乳脂はその34.5%にあたる。


ホルスタインではこの数値が28%です。いかにジャージーの牛乳がバター及びクリーム生産に適しているかが分かります。逆に、チーズ、練乳、粉乳の原料としては不適当です。


飲料乳としても毎日飲むには少しねばっこい感じがして嫌われます。たまに飲むと脂肪が濃いので、うまい感じをうけるらしい。


しかし、飲用乳のうちの特別牛乳として大いに用いられています。


この牛乳は、乳脂のカロチン含量が高く、黄色味が強い。また脂肪球は大きく、その直径は平均3.5μで、これはホルスタインのそれより25%強大きい。


これはクリームの浮上が早く、バター製造に当たってチャーニング(Churning)の時間が短縮されます。また、ジャージーの乳は、輸送中に1部脂肪のかたまることがありますが、それもこのためであつて、輸送中の振動により部分的にチャーニングを受けるためです。


現在、本邦では牛乳の取引が乳脂肪率基準で価格をつけられていますが、このような状態が続く限りは、このジャージーの高乳脂率は乳価の点では有利でしょう。


泌乳量は初産乳期で年間2,000kgぐらい、成年期で年間2,500~2,600kgです。


一般にジャージーは乳用牛のうちでも、もっとも神経質な性質をもつものといわれています。しかし、ひとなっつこいところがあり、運動場内でヒトが入ると、その方によってくるくらいです。


しかしこれは管理が行き届いているときののことで、扱いが悪いとジャージーは驚きやすく警戒心を持つようになるとのことです。


種雄牛が老令になると性質が悪化する例が本種にときどきみられますが、これはその現れです。小型で活発であり、草地での採食能力は大です。


ただし、これも良質の草地で能力をよく発揮するもので、草生の悪いところでは必ずしもそうではない。これはこの原産地の様相からも推察しうることでしょう。


熟性は早熟で、15~18か月令で繁殖に供し、25~27か月で初産分娩をします。


妊娠期間は、雌胎児の場合278.64日、雄胎児の場合、279.48日です。ただしあまり早く初産分娩をさすと体が十分出来上がらず、泌乳能力にも悪影響があるから注意が必要です。


子牛の生時体重は小さく、25~27kgです。


耐暑性ではホルスタインよりも少し勝り、耐寒性は劣るといわれています。現在、大体気候の温和なところに分布しているところをみると、環境適応性はむしろホルスタインよりも劣るかも知れないと思われます。

分布



ヨーロッパではジャージー島はもちろんのこと、イギリス本国、デンマークに分布し、またオーストラリア、ニュージーランドに多い。


アメリカは、1850年以来輸入し、現在、ホルスタインに次ぐ主要な乳牛です。


本邦にも明治時代から、たびたび輸入されていますが、その数は少なく、旧宮内省下総御料牧場と神津牧場(群馬県)とに飼われていた程度でした。


しかし近年、国土の高度利用の立場から、昭和28年(1953)以来政府はこれを輸入し、高原山麓地帯に集団的に飼育させました。輸入は、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカからでしたが、その総数は15,000頭に及び、現在これらが約30,000頭に増殖しました。


主な飼育地域は、北海道の日高・根室地方、青森、岩手、長野、山梨、静岡、岡山、宮崎の各県の山麓地帯です。

キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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