幼虫発育阻害薬(IGR insect growth regulators) ~ 農業・環境用殺虫剤にIGRが、家庭用殺虫剤にピレスロイドが多く用いられる



昆虫やダニは一般に世代交代が速く、行動範囲が狭い。例えばイエバエの活動期間は2週間以内で、行動範囲は500mを越えないと言われています。


したがって、幼虫の発育を阻害するだけでも昆虫やダニの駆除効果が十分に得られる場合が多い。幼虫の孵卵・脱殻・羽化などの変態・発育を阻害する物質はIGR(昆虫発育阻害薬)として殺虫薬に分類される。


最も大きな特色は高等動物に対する毒性が極めて弱く、事実上無毒に分類される点です。最近の傾向では農業・環境用殺虫剤にIGRが、家庭用殺虫剤にピレスロイドが多く用いられます。

昆虫幼弱ホルモン(insect juvenile hormones)



昆虫幼弱ホルモンは幼虫の体内にあるホルモンで、体内から消失すると変態が始まる。したがってこのホルモンと類似の作用を持つ物質を幼虫に作用させると変態の開始が阻止される。

メトプレン(methoprene)

幼弱ホルモン系IGRの代表的化合物。

①噴霧剤で犬舎のノミ発生防止
②乳剤を畜舎周辺のハエ発生場所に噴霧してハエ幼虫駆除
③五齢期のカイコに適用し、マユ作りまでの期間を延長させ、一匹あたりの生糸生産量を増加させるなどの用法に用いられる。



本邦ではメトプレンが防疫用と蚕用だけに販売されており、畜舎内外の昆虫発生防除には同系薬のピリプロキシフェンが用いられる。


キチン質合成阻害薬



昆虫の変態では新しい外殻の形成が必要です。したがってキチン質の合成阻害薬は昆虫の発生防止に用いることができる。高等動物に対する毒性は極めて弱い。

テフルベンズロン(teflubenzuron)

低濃度でハエ、アブの発育を阻止する。高等動物への毒性は事実上ない。


水和剤を水に希釈してハエ幼虫(ウジ)の発生場所に散布する。


ルフェヌロン(luferunon)

イヌノミやネコノミは犬猫の体表に産卵し、約2~3ヶ月で世代を交代する。ルフェヌロンを犬猫に経口投与すると高率に吸収されて脂肪組織に高濃度に分布する。その後、脂肪組織から徐々に放出されるので低い血漿中濃度が1ヶ月近くも続く。雌のノミが吸血するとルフェヌロンが卵に移行して産卵後の孵化や発育を阻害する。


従って、錠剤を1ヶ月に1錠ずつ投与していけばノミの発生を防止できる


その他の機序によるIGR



幼虫が脱皮にために古い表皮を分解するキチナーゼの阻害薬とか、幼虫の発育を阻害するがその作用機序が明らかでない物質もIGRとして用いられる。


トリアジン誘導体のシロマジン(cyromazine)は作用機序不明のIGRで、①畜舎内外のハエ発生防止、②家畜の飼料に添加すると吸収されずに糞に混ざるので、糞や堆肥からハエの発生が防止される、などの用法に用いられる。


ただし、本邦では②の用法を用いていない。

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