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脊髄の損傷 ~ 症状・診断および鑑別診断・予後


脊髄損傷の症状



脊髄に損傷が生じてその機能が障害されると、自己受容性感覚、運動および知覚の障害のほか、脊髄反射の異常および自律神経系の障害が現れます。


脊髄神経はそれぞれ定まった組織に分布して、その運動機能を支配していますから、損傷をうけた脊髄の部位にしたがって症状が異なる。


たとえば前肢または後肢の伸筋に分布する脊髄神経の起始部の分節が損傷をうけると、肢の挙上、前方提出が妨げられる。


一方、知覚障害は体表の麻痺領域の出現となって探知されるが、障害をうけた患部では却って知覚過敏hyperesthesiaを呈することもあります。


脊髄反射の異常あるいは欠落は損傷部位の判定に役立つ。


脊髄には自律神経系の中枢が存在するから、脊髄の損傷は自律神経の機能にも障害をひきおこし、血管運動麻痺、呼吸麻痺、消化管運動や消化機能の障害、膀胱麻痺を生じさせ、ややもすれば生命に危険をもたらす。


頸椎に強い外力が作用した場合は、延髄が侵害され、呼吸麻痺、四肢麻痺、膨張がおこって死亡することがあります。


大多数の例では、頭頸の自発運動の制限(斜頸)、前肢の強拘歩様または失調性歩行、咀嚼と嚥下の障害、餌が適当な高さに置かれないと採食が不能、頭頸の他動運動に対する強い抵抗、呻吟、捻髪音か突発的な転倒または両方などの徴候が現れる。


胸椎-腰椎の損傷の場合には、小動物では視診、触診によって個々の椎骨の転位が認められる。大動物ではそれは難しいが、しかし背線の屈折は判明することがあります。


また大動物では損傷をうけた患部の明瞭な知覚過敏は例外的にしか出現しませんが、それより尾側には知覚と運動の脱落がおこり(反射の減弱ないし喪失、協調運動不能、後肢の不全麻痺ないし麻痺、犬坐姿勢、または寝たきり)、その領域の拡がりから外力の作用点および受けた損傷の程度を判定できることが多い。


仙骨の損傷の場合には、仙骨管内に位置する馬尾に不全麻痺または麻痺が生じて、種々の障害をもたらします。

診断および鑑別診断



外傷性の脊髄損傷はたいてい原因となる事故の直後に突然発生します。


一方、炎症、感染、腫瘍、寄生虫の侵入による損傷の場合は症状が徐々に進行します。しかし、個々の症例について鑑別診断を下すことはしばしば困難なことがあります。


たとえば病気がちがっても臨床徴候は同様です(呻吟、斜頸、嚥下障害、周回運動、運動失調、不全麻痺ないし麻痺、寝たきり)、一方、病変部の位置や範囲によっては、同じ病気でも臨床徴候が異なる。

予後



ショックの持続、昏睡、循環又は呼吸機能の異常、高度の麻痺がある場合は、とくに大動物では治療が奏効することは期待できない。


損傷が比較的軽く、意識、運動、採食がつぎの3~5日の間に明らかに改善されるならば、日時の経過につれて完全になおる可能性がある。


しかし、多くは何らかの後遺症がのこり、大動物ではその利用が妨げられる。


その他、脊椎の骨折および髄膜血腫の症例では、遅かれ早かれ、小さなきっかけ(壊死、骨片の二次性化膿性感染、後出血など)から、改めて危険な合併症がおこって、そのためまったく予期しない死にいたることがあります。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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