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脊髄の損傷 ~ 治療


脊髄損傷の治療



小動物における脊髄の損傷は、救急の治療が必要です。しかし、外科的に処置するか否かについては、次の項目について慎重に検討しなければなりません。

(a)全身状態と神経学的徴候の検査



脊椎は構造が頑丈で、また丈夫な筋肉で囲まれているので、これに骨折や脱臼をひきおこした外力は強大なはずです。したがって、他の損傷(頭の外傷、胸腔の出血、気胸)やショックの有無を十分に調べる必要がある。


神経学的徴候として随意運動、脊髄反射、痛覚の異常を詳しく調べる。


なお、これらの検査を行う際には、できるだけ患畜の動きを少なくすることに留意します。

(b)脊椎の不動化



脊椎が損傷をうけたあと、また椎間板ヘルニアの発生後は、あらゆる手段を尽くして脊椎の不動化をはかる(たとえば大きな板にテープで動物を固定する)。

(c)ショックと他の部位の損傷の手当



補液、全血輸血、グルココルチコイドの投与などの処置をほどこす。

(d)X線検査



脊椎の全長にわたるX線検査のほか、胸腔と腹腔についても検査が必要です。


腹背方向の写真を撮影するために動物体を動かす時には脊髄に危害が加重される危険が避けられないので、特に慎重を要しますが、時には撮影不可能なことがあります。


X線写真の読影に当って注意すべき点は、(ⅰ)受傷した際の骨(片)の位置の移動はX線フィルム上に見られるよりも、もっと大きかったかもしれない、(ⅱ)受傷後、骨(片)が何回も動いたかもしれない、(ⅲ)X線写真はかならずしも脊椎の損傷の拡がりを正確に示さない、(ⅳ)X線写真は神経学的な損傷を正確に写すことはできないから、写真と神経学的徴候あるいは予後との間には関係がない、などです。

(e)手術の適応



(ⅰ)不全麻痺または麻痺によって明らかに歩行運動が妨げられている、(ⅱ)機能障害が受傷後も進行している(骨格の不安定または出血が続いて血腫が形成されている可能性を示す)、(ⅲ)脊柱管の転位を伴う脊椎の脱臼または骨折、(ⅳ)触診またはX線検査で脊柱の不安定が認められる、(ⅴ)たとえば括約筋の麻痺など、他に明らかな脊髄障害の徴候がある、(ⅵ)仮骨または瘢痕形成のため二次的に脊髄の圧迫がおこるかもしれないような骨折。


これらのどれにも該当しない症例は内科的治療法のみでも奏功する。

(f)脊髄の圧迫に対する特異的な治療法



脊髄の圧迫の主体である浮腫の発生の契機になる中心性出血性壊死は、その発生病理が明らかでなく、適切な対策がない。


これに対して浮腫を緩和するために投与されるコルチコステロイドは効果が大きい。


脊椎が強い衝撃をうけると、浮腫は受傷後5分以内に現われ、その後3~6日間は憎悪する。したがって、受傷後一亥も早く投薬を開始し、徴候のある限り続ける(約2週間)。


マンニトールは使用後に合併症の発生が多い。局所の冷却はあまり大きな効果がない。


強い外力が加わって、脊髄硬膜の腫脹と出血による変色が生じた例では、椎弓を切除して直視下で行う硬膜切開durotomyが有効で、コルチコステロイドの投与と併用されることがある。

(g)手術療法



手術療法の目的は、(ⅰ)圧迫と脊髄外の出血に起因する脊髄の損傷をすみやかに治療する、(ⅱ)堅固な内固定と異物の除去をはかる、ことにある。


人の脊椎の脱臼は牽引と外固定で治療できるが、動物の場合は、手術による整復と固定が必要です。


それには多大の危険が伴いますが、適切に行われれば運動機能の完全な回復が期待できます。


手術の内容は(ⅰ)椎弓切除術。骨片、血腫または脱出した髄核を除去する。また脊髄内の止血、硬膜切開の目的でも行う。


(ⅱ)脱臼した椎骨の整復。


(ⅲ)椎骨の固定装置の装着。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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