偽鼠径ヘルニアまたは鼠径間質ヘルニア・会陰ヘルニア・大腿(輪)ヘルニア


偽鼠径ヘルニアまたは鼠径間質ヘルニア(inguinal interstitial hernia)



ヘルニア嚢が深鼠径輪あるいはその付近より、鼠径管→浅鼠径輪の方向に侵入せず、腹筋間あるいは腹筋断裂部に嵌入するもので、内鼠径ヘルニアinternal inguinal hernia,直接鼠径へルニアdirect inguinal herniaという。


主に小腸が侵入し嵌頓が発生しやすく、予後は不良なことが多い。


これに対し前述の鼠径ヘルニアを外鼠径ヘルニアexternal inguinal hernia,間接鼠径ヘルニアindirect inguinal herniaといいます。


雌犬の場合、深浅鼠径輪は相接し、鼠径管が非常に短いので、前述の雌犬の鼠径ヘルニアが、ここでいう直接あるいは間接鼠径ヘルニアのいずれに相当するかは判断に苦しむ問題です。

会陰ヘルニア(perineal hernia, perineocele)



会陰ヘルニアは5~6歳以後の雄犬におこる疾患です。雌犬では陰唇の側方に転位した鼠径ヘルニアが会陰ヘルニアと誤診されることがあります。猫、牛などにもまれに見られる。


原因:先天的または後天的な解剖上の素因および内分泌のアンバランスによって、雄性骨盤がより広く、かつ弛い雌性骨盤の形を取ることが、本症発生の基因と考えられています。


骨盤腔には骨盤隔膜diaphragma pelvis(肛門挙筋、内閉鎖筋、尾筋からなり、骨盤腔の後の境界を形成する)、仙結節靱帯lig.sacrotuberale,腹膜の恥骨前立腺皺襞および恥骨膀胱皺襞plica puboprostatae et pubovesicalis,骨盤筋膜fascia pelvisなどの構造が存在して、骨盤臓器および腹腔臓器の後方転位を防いでいます。


会陰ヘルニアの例では、これら諸構造の骨盤底、恥骨縫合、恥骨、坐骨への付着が弱い。先天的に尾が痕跡的にしか存在しないボストンテリアは、尾筋が薄弱で会陰ヘルニアを発することがもっとも多い。


また他の犬種でも、先天的にまたは初生時の仙骨および尾骨の損傷によって、骨盤隔膜が萎縮している場合には本症が発生する。


症状:会陰筋膜(骨盤筋膜)が弱くなって緊張がゆるくなり、また肛門挙筋、尾筋と肛門括約筋の間が分離する。


一般にまず直腸がふくれだし、次いで前立腺と膀胱が骨盤腔にはいってくる。外見では肛門の片側が膨隆してくる。直腸に憩室が形成され、便秘と糞の停滞が生ずる。


時には膀胱が下外方に後反して、骨盤腔にはいってくると、尿道が捻転して排尿不能となり、急速に症状が悪化します。急性の苦痛と尿毒症の初期症状が現れる。


後腹膜の組織は増生し、脂肪壊死と石灰沈着がおこり、大網ににた外観を呈して、しばしば大網と見あやまる。牛の場合も膀胱が関与していることがあります。排尿後にヘルニアが縮小します。


治療法:糞が停滞し、膀胱の脱出または絞扼が生じている時には、まず全身麻酔のもとに、膀胱の整復をはかり、次いで会陰切開によって整復手術を行い、弛緩した骨盤隔膜を縫いつめる。


筋相互の縫合・閉鎖が十分できない場合には、内閉鎖筋あるいは浅臀筋の転位術も多用される。手術と同時に去勢を行うことが多い。回復するまでに8~12日間を要する。


プラスチックのメッシュも応用されています。

大腿(輪)ヘルニア(femoral or crural hernia)



大腿動・静脈の通過する大腿管femoral canalに小腸または大網が侵入したもので、稀れに馬および犬に見られます。嵌頓を発しやすく、特に小腸の場合には、経過がはなはだ急速です。


運動障害、疝痛症状、消化不良が主な症状です。その大きさは、鶏卵大に達する。鼠径ヘルニアとの鑑別診断を必要とします。


治療法は手術療法によりますが、血管を傷つけないよう慎重に行う必要があります。

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