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食道の疾患 ~ 特発性巨大食道症・後天性食道アカラジア(食道無弛緩症)


特発性巨大食道症(Idiopathic Megaesophagus(IME)



離乳直後あるいはそれ以前の子犬にみられる食道の神経筋疾患の一つで、自然に治癒することが多い。


ワイアーヘアードフォックステリアなど特定の品種では遺伝性が疑われていますが、ミニチュアシュナウザー、ジャーマンシェパードを始め多くの品種での発生が知られています。


原因:基本的には食道の前進性蠕動の消失と下部食道括約筋の弛緩不能による食道拡張を特徴としますが、臨床例の中には蠕動および括約筋弛緩の程度や発現時期に種々の違いがみられ、程度の差はあれ、これら両機能の異常あるいは両者の同期性機能の異常によるものと考えられています。


症状:採食数時間後に食物を吐出することが多く、吐出物はソーセージ状を呈していることがあります。経過が進むと食道内発酵のため、腐敗臭を放つ。


口と鼻を閉じて胸を軽く押すと、拡張した食道を触知できることがある。


多くの犬で吸入性の肺炎を併発しているが、一般に同腹犬に比べて発育が悪く、体が小さい。X線単純写真、バリウム造影写真で拡張した食道を確認できますが、成犬で発症した場合には、後述する後天性アカラジアとの区別が困難です。


治療法:成長に伴って蠕動の発現、下部食道括約筋の弛緩、これら両者の同期化などにより自然に治癒する例が少なくないので、それまでは後肢で立たせて採食させるなどの保存療法に徹し、吸入性肺炎の防止に努める。


自然治癒は12ヶ月齢以内に生ずる例が多い。


下部食道括約筋を弛緩させるためのHellerの術式の効果については否定的意見が多いが、早期における有効性を主張する向きもあります。

後天性食道アカラジア(食道無弛緩症)Acquired Achalasia of Esophagus)



前項とよく似た筋神経性疾患ですが、食道疾患歴のない成犬にみられるものをいい、自然に治癒することはありません。


原因:食道の後天的神経筋異常によると考えており、中枢性疾患、中毒、付近臓器の圧迫、食道内異物ないし器質的病変により食道の蠕動消失が生じるのではないかともいわれていますが、なお詳細は明確ではない。


症状:吐出が少なくとも1日1回以上みられるが、食物でなく白い液を混じた粘調な液を出すことも多い。吐出の程度は必ずしも一定しないが、次第に体重が減少する。胸郭前部の食道の拡張を触知できることがある。


X線単純写真では、横隔膜に至るまでの食道全体がガスや空気を満たして拡張している。バリウム造影では、この所見の確認と共に、下部食道括約筋が閉じており、食道内圧が上がり、後肢で立たせた体位にすると、少しずつ胃内に流入するのがみられる。


治療法:保存療法としてはまず第一に、後肢で立たせて採食させて全身状態の改善をはかる。Hellerの術式による下部食道括約筋の拡張の成果については、前例ではないが有効性を示す報告が多い。


吸入性肺炎に対する配慮が必要なことはいうまでもない。

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