陰嚢水腫(hydrocele)
陰嚢水腫は鞘膜腔内に滲出液の貯溜した水腫で、これがある時は睾丸が萎縮して正常より小さいのがふつうです。時には水腫が精索に限局していることもあります。
原因
本症は先天性に発生していることがあり、また睾丸または精索の外傷による炎症、鞘膜腔内の寄生虫の存在(Sclerostomum edentatum, Filaria papillosa)によって発することもある。
また腹水および全身性浮腫に認められることもある。
症状
陰嚢が腫大し軟らかく弾力性がある。
急性症では増温、疼痛があり、慢性症では無痛で増温がない。時には著しい大きさに達し、浮腫様の抵抗を示す。陰嚢ヘルニアと鑑別診断をする必要があります。
治療法
陰嚢ヘルニアの場合と同様な方式で去勢を実施する。
馬、豚および犬(稀れ)におこるもので
鼠径ヘルニアの一変型と考えられます。
陰嚢の皮膚疾患(skin diseases of the scrotum)
陰嚢の皮膚はセレニウム、ヨードその他の化学薬品には、特に敏感に刺激され、同時に細菌感染をうけることが多い。刺激を受けると、皮膚は滲出液を出し、細菌、カビ類の感染をうけやすくなる。抗生物質療法が必要となります。
老犬にはしばしば慢性の陰嚢皮膚肥大をみる。
特に陰嚢下部皮膚が肥厚し、しわがより、色素沈着が顕著となり、脱毛をみる。重度の感染がなければ大したことはない。また同じく老犬に陰嚢血管の静脈瘤様腫脹Varicosityをみることがあります。
陰茎および包皮の損傷(injuries of the penis and prepuce)
小動物では、自動車事故、咬傷、障害物飛越あるいはくぐり抜けなどの時、大動物でも闘争、交尾の時に雌に蹴られる、その他凍傷など理化学的原因より発することがあります。
通常かなり出血があり、まれに尿道裂開をみることがあります。周囲皮下織への浸潤、フレグモーネがみられる。付近の浮腫、腫脹から排尿障害のおこることがあります。
特に馬では包皮の腫脹が著しく増温、疼痛が認められ、時に包皮の内葉が脱出して陰茎麻痺と誤診されることがある。
予後は一般に良好で、原発の損傷に治療をほどこし、適度の運動を課することによって治癒します。