これも英仏海峡群島の1つの島であるガーンジー島原産の乳用種。島がジャージー島と姉妹島といわれるように、つねにガーンジーはジャージーとともに紹介されてきました。
またその成立も、ジャージー同様にフランスのノルマンとブルトンが基礎となっています。ただし、ジャージーがブルトンの血液を多く持っているのに対し、これはノルマンの血液が多いと言われています。
ガーンジー島もジャージー島とほぼ同面積の小島で、園芸を主とした農業が営まれており、蔬菜、花の栽培がさかんです。気候もジャージー島とほぼ同じですが、気温はやや低い。
そこに乳牛の約8,000頭が飼われています。
濃厚飼料は殆ど与えず、草本位に飼われていますが、土地が狭いから放牧は主として長い綱をつけたつなぎ放牧によっています。これも島内で永年純粋繁殖をくり返してきました。
1824年には、生牛の輸入禁止を法令で決めている。
一定の目標を決めて選抜を行い、体型の均一度を得るにつとめたので、現在よく揃った体型を示している。
ガーンジーの詳細
毛色は淡黄色または赤色に白の斑紋があります。白はふつう、顔面、四肢、腹、乳房、尾房にでる。ジャージーよりも少し大きい。
体高、雌約、125cm、雄約137cm、成体重、雌400kg~450kg、雄600~700kgで、乳用牛としては小さい方です。
ジャージーにくらべると、牛全体からうける感じはいくぶん粗野です。
体型においてもジャージーほどは整ってはいない。顔は狭く少ししゃくれているが、ジャージーほどひどくしゃくれていません。
胸はジャージーに比べれば広い。中軀の張りもよく、後軀の幅も広い。乳房の形状もジャージーと少し異なり、これは丸みを帯びた方形です。
乳房の発達のよいのは本種の美点の1つでしょう。
能力
乳脂がとくに黄色であることで有名です。
とくに青草主体で飼うとこれが甚だしい。そのため、テーブルバターとして喜ばれたこともあります。脂肪球も大きく、平均直径3.3μです。
乳脂率はジャージーほどではないが、平均5.0%で、高い方です。
全固形分は平均14.5%で、脂肪はその34%を占めています。したがってこれもバターの原料乳向きです。しかし脂肪が濃くて特別牛乳として販売されています。
乳量は年間3,000~4,000kgで、ジャージーよりも少し多い。
性質は活発ですが、温順です。
厳しい気候に対する抵抗性が強いともいわれています。
比較的早熟ですが、性成熟はジャージーより2か月ほど遅く、17~19か月で初種付されて、26~28か月で初産分娩するのがふつうです。
妊娠期間は雌胎児の場合、294.40±0.56日、雄胎児の場合、295.35±0.85日です。
子牛の生時体重は30~35kgです。ジャージー同様に子牛肉生産に向かない。その上、飼料から由来するカロチン色素をビタミンA化する能力が乏しく、カロチンがそのまま沈着するので体脂肪は著しく黄色であって、肉用としては拙い。
ガーンジーの黄色は生体における皮膚にも良く現れており、耳内、乳房などもその皮膚は明らかに黄色です。
分布
原産地以外は、イギリス本国、アメリカ、カナダに分布しています。ジャージーほど分布地域は広くない。ジャージーより北方に偏しています。これは寒地に向くことを示すものでしょうか。
本邦には明治20年(1887)東京市外に、また同22年(1889)に北海道大学の農場に、それぞれアメリカから輸入されました。
また、昭和に初めに愛知県知多半島に入ったこともあります。
わが国ではあまり頭数が増えない。