大腿骨の骨折(fractures of the femur) ~ 大動物



大腿骨の骨折はさまざまの動物に発生します。


骨幹の骨折のほか、近位端では大腿骨頭と大腿骨頸の骨折、大腿骨頭の裂離骨折、大転子の骨折、近位骨端の分離、また遠位端では顆上骨折、顆間骨折、顆骨折、遠位骨端の分離が、単独でまたは合併して発生します。

大動物



馬と豚に発生が多い。子馬では乗馬調教の初期に激しく抵抗して暴れる時に発生し、豚では骨粗鬆症、過密な飼育、滑走、闘争が原因となります。


牛でもめずらしくない(四肢骨折の15.7%, Wyssmann; 15~20%, Rosenberger)。幼牛、若牛よりは成牛の雌に多い。


また種雄牛では、交配時の事故として発生します。


若い動物では、大腿骨頸の骨折と遠位骨端の分離が多く、成畜では骨幹の螺旋骨折がおおい。

近位端の骨折



大腿骨頸の骨折は若い大動物におこることが多い。


大多数はなおる見込みがありませんが、若い子牛では安静の保持でなおることがあります。


繁殖に供用する動物の大腿骨頸または大腿骨頭の骨折では、大腿骨頭の骨切り術を行って偽関節を形成させると、跛行はつづくが疼痛がなくなる。


大転子の骨折では、腫脹、捻髪音、肢の外転と屈橈、懸跛が認められ、後には殿筋の萎縮と大腿尾側の筋の肥大がおこります。


安静を保つと数週間でなおるものがあります。長い髄内釘を打ち込んで固定できることがあります。


大腿骨近位骨端(線)の骨折分離は、股関節の骨関節症に似ますが、生後3ヶ月~1年の若い牛では比較的弱い外力によって発生することがあります。


軽度の軋轢音、異常運動、腫脹が認められます。


X線検査を行う。絶対安静以外には治療法がない。骨片の転位がなければ予後はかならずしも悪くないが、転位があれば予後不良です。

大腿骨骨幹の骨折



螺旋骨折のほか、破砕されて尖った長い骨片が生ずることが少なくない。骨片騎乗がおこる。


ふつう開放骨折になりませんが、筋、神経(会陰神経、脛骨神経)、大腿動・静脈に重度の損傷が生じます。


腫脹と著しい変形、激痛がある。骨片騎乗があれば捻髪音は明らかでない。膝蓋骨が転位しやすく、膝関節の機能異常が必発し(脛骨骨折の場合にはおこらない)、混跛を呈する。


患肢に負重せず、起立を欲しない。胸骨臥位では、肢が外側方へ屈折します。


子牛、子馬では髄内釘(特注)または骨プレートを用いて内固定をほどこし、これにThomas副子を併用します。ただし、感染の危険が小さくない。


ギプス包帯とThomas副子の併用が第一選択ではない。


成畜ではごくまれに、安静の保持で骨の癒合をうることがありますが、成豚(骨プレート使用)以外は、骨接合術が成功する可能性はほとんどありません。

遠位端の骨折



単一の顆または上顆の骨折は若い牛におこります。


関節に限局性の腫脹が発生し、重度の跛行を呈します。X線検査を行う。


骨接合術による治療の予後は骨幹遠位部の横骨折よりは悪くない(後者の場合には、肢がグラグラ動きやすく、膝関節の機能障害が著しい)。


固定にはRushピンが用いられますが、結果は不良なことが多く、あとに慢性の変形性膝関節炎がのこる。大腿骨遠位骨端(線)の骨折分離で骨片の転位がない場合は、予後がかならずしも悪くはない。


大動物の大腿骨骨折の大多数では治療が成功する見込みは少ない。


しかし、若い動物や小型の体重の軽い動物では、自然治癒の可能性あるいは骨接合術が成功する例があります。生産性を重視する場合には自然治癒あるいは骨切り術に依存します。


しかし年とった、体重の重い牛と馬では、治癒させることは難しい。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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