骨折の二次的合併症 ~ 仮骨の異常・骨折の遅延治癒および偽関節



骨折の予後を判定する場合には、骨折個所についてばかりでなく、全身状態の良否、重要な器官の損傷、重度の感染など合併症の有無、および患肢の保存の可否についても、十分検討する必要があります。


治癒後の骨折患部の形態と機能、および治癒に要する期間については、次のような二次的合併症に関する考慮が必要です。

仮骨の異常



仮骨が過剰に発生して、それが吸収されずに持続するものを過剰仮骨(luxurious callus)といい、粉砕骨折、骨片の著しい転位、広範な骨膜剥離、大きな血腫の存在、患部の感染、固定不良による骨片の可動性など、仮骨形成の刺激が強くかつ持続する時に形成されます。


特に関節付近の骨折では、その傾向が強く、その結果、関節運動の制限がおこります。伝染病・壊血病などの全身疾患、フレグモーネなどの局所疾患がある時には、仮骨が軟化、吸収されて、骨折部に異常可動性が再発することがあります。


また新生仮骨の負重能力に対して過剰な力が加わると、その部で再骨折がおこることがある。

骨折の遅延治癒および偽関節



骨折の癒合にふつう必要とされている日数が過ぎても、骨の再生が量的に少なく、進行が緩慢で癒合が完了しないものを、骨折の遅延治癒(delayed union)といいます。


これに対して、骨折端の間の骨形成反応が停止し、骨の断端が離開して、間隙が結合織または軟骨で埋められているものは、偽関節(non-union, pseudarthrosis)と呼ばれます。


遅延治癒の場合は、骨を修復・再生する組織反応がまったく消失しているのではなく、適当な治療法(たとえば堅固な再固定)をほどこせば、癒合がおこる可能性があります。


X線写真では骨折線が明らかに認められ、仮骨が非常に少なく、骨の断端は輪郭が不鮮明です。また偽関節では、患部に異常可動性があり、無痛で、X線写真でみると、骨の断端が丸くなっています。


骨髄腔の開口部が閉鎖されている、断端間に輪郭の明瞭な間隙がある、断端の骨の陰影は濃いが、そこから少し離れた部位の陰影は薄く、無機質が減少している、骨折部で骨が屈曲している、などの所見があり、再手術によらないかぎり治癒の可能性がない。


遅延治癒または偽関節が発生する主な原因は、両者ともほぼ同様で、①不十分な固定、または固定の維持の欠陥、②不完全な整復、③断端間に軟組織の介在、④断端の離開、⑤骨の欠損、⑥血液循環障害、⑦感染、⑧骨多孔症などです。


遅延治癒骨折は、しばしば偽関節に転化します。


また、それらの発生は骨の部位によって差があり、犬で生じやすい例は、①橈骨および尺骨の横骨折または斜骨折、②大腿骨頸の骨折、③脛骨の遠位1/3の部位の骨折、④骨幹中央部の横骨折です。


大動物では、遅延治癒が発生しやすく、骨折の治療上もっとも問題となる合併症です。

治療法



遅延治癒の場合には、治癒機転を再燃させるためには、次のような方法がとられます。


(a)整復が良好な場合には、Beck骨穿孔法(boring of bone)を行うか、または堅固な固定を長期間続ける。


(b)整復が不良で、たとえば骨折端が互いに接触していはいるが、側方転位、屈曲転位などが明らかな時は、手術的に転位を矯正して堅固な固定をほどこします。


Beck骨穿孔法は、皮膚を切開することもしないこともありますが、骨折端から少し離れた部位から骨折線を貫いて、斜めに数本の穿孔を行って上下の骨髄腔を交通させ、骨の再生を促進する方法です。


偽関節は手術によって治療します。


偽関節には、二つのタイプが区別されます。


(a)象足型(elephant type)


骨の断端の血液循環はなお保たれていますが、骨の硬化(consolidation)がおこらない。すなわち、新生された骨小柱がくりかえし破壊され、牽引力がはたらく場合は結合織性の、また圧迫力が加わる時は軟骨性の組織で、断端の間隙が埋められます。


外仮骨は多量に形成されて断端が拡大します。


内仮骨が、稠密で大きい板状の塊になって蓋のように骨髄腔の端をふさぎ、両断端の間に関節腔に似た空隙ができることがあります(新関節nearthrosis)。


このタイプの偽関節では、整復が良好ならば、かならずしも断端の切除や骨移植の必要はない。Kirschnerハーフピン副子による外固定法、締結プレート法、または髄内釘とKirschneryハーフピン副子の併用によって、骨片の絶対的不動と圧迫接合をはかる。


(b)萎縮型または非反応型(atrophic or nonreactive type)


骨の断端部の血液循環が停止して、骨の再生反応がなく、X線写真では断端の骨組織の陰影が薄いか、認められません。断端の間隙は、結合織か軟骨で埋められています。


断端が丸味を帯びる、骨髄腔の端が蓋でふさがれている、などの点は象足型と同様ですが、外骨膜性の造骨反応がなく、新関節を形成しない。


大規模な皮質剥離decortication、堅固な固定および多量の自家海綿質の移植によって、骨片の絶対的不動と血液循環の改善をはかる。


骨の断端間に軟部組織が介入して発生した偽関節は、介入性偽関節(Interpositionspseudarthrose)といいます。


これは整復時の不注意、整復後の固定操作またはそれ以後におこる骨片の転位などによるもので、術後の検査の不十分を示すことがおおい。


術部を広く開き、断端の修正と堅固な骨接合術を行う。必要が認められれば、骨移植も行う。


骨の欠損を伴う欠損性偽関節(Defektpseudarthrose)は、固定不良と感染が重なった時にみられる重篤な合併症です。経過が長く、中途で膿瘍の形成があり、腐骨が生じ、移植骨片は破壊されます。


筋の廃用性萎縮と骨の異常運動が顕著で、X線写真で骨の欠損、萎縮、感染などの像が認められます。これに対しては、骨断端の皮質剥離、堅固な固定および多量の海綿質移植を行うほか、全身的および局所的に化学療法を実施します。


早期に発見することが肝要です。


偽関節の患部は、症例ごとにさまざまの異なった状況を呈しているから、治療の術式にもそれぞれ工夫が必要です。


要は、患部ののぞましくない硬化した組織と変形した骨膜を剥がし、あるいは部分的に除去し、骨ネジ、髄内釘、骨プレートなどを適宜選定して骨片を堅固に再固定した上で、間隙に骨の破片(bone chip)を充填し、また時にはさらに重層移植片(onlay graft)をあてがって、ネジで固定します。


骨移植は自家移植(autogenous transplantation)がもっとものぞましいですが、同種移植(allotransplantation)も実用的価値が認められています。


新鮮な骨破片は、上腕骨・大腿骨・脛骨の海綿質に富む近位端から入手できます。套管針型の尖端をもったSteinmannピンで骨に穿孔し、小さい鋭匙で海綿質を掻きだします。


また腸骨の寛結節の一部を切除して、細砕したものを使用することもあります。重層移植片としては、大型の幼犬(3~5ヶ月齢)の第七または第八肋骨を採取し、縦に割って使用するか、または、腓骨を利用します。


移植骨片を-20℃に保てば6~12ヶ月の保存も可能です。


操作はすべて厳重に無菌的に行わなければなりません。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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