仮骨の癒合
骨形成細胞層と中間にある軟骨層の増殖によってカラーの成長はつづき、厚くなり、両骨折片のカラーは互いに相対して、ふくれる。
遅かれ早かれ、これら二つのカラーは接近して、ついに癒合し、架橋(bridge)ができる(骨折片の癒合union)。骨髄腔の断端においても、形成された骨小柱が架橋し、癒合します。
軟骨の運命
仮骨内に形成された軟骨は、正常には一過性の存在です。
すなわち、新たに形成された骨組織に接する軟骨細胞は成熟しますが、その周囲の間質に骨塩(主として水酸化リン灰石hydroxyapatite, Ca₁₀(PO₄)₆(OH)₂)が沈着すると、血液供給が途絶して、軟骨細胞が死にます。
最後に軟骨は全部、骨によって置換されます。
仮骨の改溝
以上の過程で、骨芽細胞が形成する骨小柱は、死骨のあちこちにもしっかりと付着します。骨小柱内部の間隙には毛細血管が進入し、死骨の基質(matrix)は、破骨細胞によって徐々に侵蝕されます。
その空所には骨芽細胞がはいりこんで、そこに新しく骨を生みつけ、それが最後に死骨に入れかわります。
この段階で、外仮骨は輪郭が紡錘形の海綿質の塊になっており、また死骨の大部分はすでに吸収されています。その時までに、内仮骨もまたよく発達しています。
すなわち、両骨折片の骨髄腔内では、内骨膜と骨髄内の骨形成細胞から骨小柱が新生してきて、互いにつながります。また骨断端間にも外骨膜と内骨膜の骨形成細胞から骨小柱がつくられて、断端をつなぐ。
軟骨が骨によって置換されるにしたがって、仮骨の全体が海綿質構造に変化し、皮質の場合は、さらにそれが徐々に改造されて、緻密な層状骨になります。
こうして骨が堅牢になる一方、仮骨の周縁の骨小柱は不必要になって吸収され、最後に元の骨の輪郭が回復して、骨折個所が判別できなくなります。
このように、いったん形成された仮骨が、しだいに本来の骨構造に変化することを改溝(reconstruction)と呼びます。
皮質の厚い骨の骨折の治癒
長管状骨の皮質は厚く、ハバース系(骨単位osteon)の数が非常に多い。
その骨折を手術によらず、ギプス固定で処置すると、その治癒過程は前記の肋骨骨折における所見と非常によく似ていますが、ただ次の点が異なっています。
すなわち、骨断端の皮質のハバース管から、骨形成細胞と毛細血管の芽が伸びてきて断端の間隙にはいりこみ、皮質間に発達する内仮骨に加わることです。
また手術によって堅固な固定を行うと、仮骨の形成に果すハバース管の役割はもっと大きい。