沸素 Fluor F ~ 剖見・動物体臓器の沸素量・療法・予防法


剖見



胃に義膜性カタール性炎、粘膜の異型増殖、腸のカタール性炎、肝の細胞変性、鉄反応陽性の褐色色素沈着、肝細胞の広汎な壊死、肝硬変の初期像があり、腎臓の溷濁腫脹、間質増殖。


生殖腺、脾、骨髄の萎縮。


副腎心臓の脂肪変性があります。


以上はもちろん沸化物のみの変状とはいえませんが、火山灰中にはこの疑も充分考えられ、特に微量で慢性の経過をとる場合は硬質組織の変化が重要になります。

動物体臓器の沸素量



動物体に沸素の蓄積が多くなると特に骨や歯の石灰化が不完全となり、脆弱化するものと考えられますが、熊本地方の牛について検べたことによると、骨に300~2500ppm、歯には200~2000、毛には30~90で他の地方のものに比べ、著明に含まれている。


また斑状歯の限界は1000ppmで、それ以上ならば斑状歯、それ以下ならば外観だけでは判定困難であるという。


沸素中毒時の不顕症に対しては尿中沸素量の定量を行いますが、その判定は次のようです。


正常牛と沸素中毒症牛の尿中沸素量(ppm)

正常牛

Green(1948):5.0以下

Krüger(1949):0.354~0.360

Schmidt ら(1954~58):5.0以下

江崎(1959):0.3~4.8


中毒牛

Green(1948):10.0以上

Krüger(1949):21.3~86.0

Schmidt ら(1954~58):20.0以上

江崎(1959):5.63~8.04



また、家兎につき実験的に急性、慢性中毒を起したものの蔵器中の沸素分布については歯や、骨にも多いが、下垂体、副腎などの内分泌器官や脾、胆汁、毛にも多量を含むことは注目すべきでしょう。

療法



原因となる飼料、飲水、薬品の投与を中止し、局所の炎症に対しても粘漿包摂剤の内用その他の対症療法を行います。


家兎の試験では蜜柑皮を飼料に混ぜると病症を軽減するという。


また、ビタミンCを与えると骨腫が減少、消失し、食欲が亢進します。


またビタミンDの応用も効果があるという。

予防法



沸素中毒の予防は、薬剤投与の過多を慎むことはもちろんですが、慢性中毒は飲水、飼料に含まれた過剰の沸素によることが最もおおい。


したがってこれらに対する注意が肝要です。

(1)飲水から沸素を除くこと

(イ)飲水の希釈‥沸素地帯でも沸素の少い井水があるから、これで希釈すること。

(ロ)薬物を用いること‥沸素の除去には吸着剤や、醋塩を作る方法などがあり、活性アルミナ(pH7.5で水中の沸素が分離される)燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムを用いる。

ただし費用のかかることが欠点です。

(ハ)イオン交換樹脂法‥沸素を除く原理は次の通りです。

RNH₃Cl+Na+F⮀RNH₃+F+NaCl

(2)牧草地、飼料畑に石灰を施すこと‥石灰を施すと沸素が不溶性となり、植物に吸収しないため、飼料の沸素量が減少します。

(3)飼料に石灰またはアルミニウム剤を添加すること‥石灰の添加により不溶性沸素を不溶解とする。また硫酸アルミニウム、燐酸アルミニウム、炭酸カルシウム(2%)と塩酸アルミニウムなどの添加は発生を抑制します。

(4)飼料に添加する石灰を選ぶこと‥燐石灰を混ぜることは不良の結果を招く。

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キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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