甘藷黒斑病の症状
牛は採食24時間くらいで発病し、食欲の不振や沈衰を示しますが、初期はあまり著しい変状でないために軽視されますが、漸次重症となり第3日目になると反芻、食欲の廃絶、呼吸の促拍、鼻塞音高く、聴診すると肺胞音が粗厲で捻髪音を混え、所謂肺炎様症状を示し、鼻漏ならびに口角より泡沫性唾液を漏らし、体温も39℃前後となり、眼結膜の著しい潮紅を見る。
而して畜主の注意をひき診療を乞われるのは多くこの時期であって、中毒としては加療の時機を失している場合がおおい。
次で第4日目に至れば肘膊部、臀部などの戦慄、甚しい呼吸困難のため呼吸数は100~130となり、鼻翼を開張し、頸を伸ばし、頸静脈の怒張、眼球の突出があり、同時に痙攣、瞳孔の散大、肺濁音甚だしく、心音の聴取困難となり、体温も41℃以上に達します。
体温は消化器および各臓器の出血に比例するもので、極めて広汎な出血巣のある場合は最高42.4℃まで上昇した例があります。
これと同時に出血性で粘液が混ざった下痢を来し、山羊の重症なものでは腸出血甚しく殆ど血液だけを洩らし、手の下しようのなかった例に遭遇している。
この時期になると家畜は大いに衰弱し、苦悶、呻吟が甚しく、呼吸数に一致する唸声は3~40mを隔てて聞えるほどになります。
また時には肩胛部、背部皮下、特に背椎の両側に副うて圧痛のある気腫を生ずることがあり、乳量は大いに減少し、妊畜では流・早産を起すことがあります。
重症では大体5~6日目に斃死しますが、軽症や早期治療の場合は以上の症状を継続し8日目頃より体温の分利を始めます。
これは各臓器の出血巣が治癒に向かうためですが、一般症状は恢復しているにも拘らず心臓衰弱を招き、9~10日目に突然斃死する場合があります。
予後は症状が軽く多少でも食欲のある場合は良ですが、体温上昇甚しく40℃以上を示すものは多く不良の転帰をとります。