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難産(Dystocia) ~ 難産の処置


難産の処置



難産は非常に変化の多い状態で、一定したものでないので、その診断、検査は十分に慎重綿密に行い、畜主、獣医師ともに有利な手段処置をとるよう考えることが大切です。


すなわち、母畜への損傷、影響の減少と生存胎児の挽出を目的として、できるかぎり保存的処置に努力し、不可能と考えられた時に段階的に産科手術の併用ないし実施に踏み切るべき。


一般に産科的処置として、整復法、胎児の牽引抽出、切胎術および帝王切開術があります。

整復法(reduction)



胎児の後方推進、旋回、回転により胎児を正常な胎位、胎向、胎勢にもどすように処置することです。胎児を母体の骨盤腔や産道から腹腔の子宮内へ押しもどすことを後方推進repulsionといい、整復するための空間を得るためのものです。


旋回法rotationは長軸方向にある胎児を回転し、上胎向にすることです。上胎向は単胎動物においては、きわめて小さい胎児以外のすべての場合に必要です。


回転法versionは横軸方向にある胎児を回転して頭位または尾位にすることで、馬の横腹位にもっともよく利用される。

牽引抽出(forced extraction)



外部からの力により産道を通して胎児を抽出することで、通常、陣痛が微弱なとき、麻酔の影響のある時、胎児が過大で産道通過が容易でない時、あるいは他の方法よりこの方が良いと考えられるような時に実施されます。


実施に際して、術者はたえずその時の状態を観察、検査しながら、牽引する時期、方向、強さなどを考慮し指示する必要があります。

切胎術(embryotomy)



胎児を分割するか、あるいはその一部を分断抽出することによって、引き出す胎児の大きさを減少させる手術です。この場合、器具により子宮、産道を損傷しやすい、あるいは時間が長くかかり母畜と術者が疲労、消耗しやすいなどの欠点があります。


にもかかわらず、いくつかの利点がこれを上回るので、大動物では難産救助のための実際的で有効な手段と考えられています。


むしろ、牛馬では帝王切開よりこの方が多く利用されている。すなわち、頭位においては、断頭術、開頭術、内臓摘出術、軀幹切除術、骨盤分割法などがあり、尾位においては、骨盤分割法、両後肢切断、内臓摘出術、肋骨切除術などが考えられます。


特別な場合に母畜の骨盤の一部切離などのこともある。

帝王切開術(cesarean section)



牛では未成熟牛の妊娠、頸管拡張の不十分、子宮捻転に継発した頸管の収縮、巨大胎児、陣痛微弱などにしばしば応用されます。


豚も腹膜炎に対しかなり抵抗力があるのでよく利用される。


犬と猫では難産救助にごく一般的に応用されています。


以上のさまざまな手段で成功しない時は、最終的に子宮摘出術hysterectomyを特に犬猫でしばしば実施します。

キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)