消毒薬の共通的性格(disinfectants) ~ 消毒薬は畜鶏体体表、畜舎内外、使用器具などに生息する微生物を殺滅する目的に用いる



消毒薬と殺虫薬はいずれも畜舎内外など家畜の生活環境に散在して疾病の発生や伝染を予防する目的に使用されることが多い防疫用薬。


勿論、畜鶏体体表に適用することも多いが、経口投与や注射で用いることは稀です。


消毒薬は畜鶏体体表、畜舎内外、使用器具などに生息する微生物を殺滅する目的に用いられます。この目的のために速効的な殺菌作用と広範囲な抗菌スペクトルが要求され、微生物に対する選択毒性は第二義的になる。


したがって微生物に対する選択性の低い殺菌性物質が用いられ、高等動物に対する毒性は一般に化学療法薬より高い。

●消毒(disinfection)

微生物による感染を防止する目的で、有害な微生物の全てを殺滅する操作をいう。しかし全てのウイルス、真菌、芽胞を完全には殺滅できない場合が多い。


●滅菌(sterilization)


全ての生物、特に微生物を完全に殺滅することをいう。滅菌には加熱や放射線などの物理的方法を用いることが多いが、消毒薬による化学滅菌も用いられる。


●衛生消毒(sanitization)

家畜の生育環境や使用器具に生存する有害微生物の数を衛生学的見地から許容できる範囲内に減少させることで、これに用いる消毒薬を衛生消毒薬(sanitizers, 防疫用消毒薬)という。

多くの場合、洗浄効果のある消毒薬が好まれる。


●防腐薬(antiseptics)

消毒薬のうち畜鶏体に直接用いる薬剤を防腐薬と呼んでいたが、この用語法はあまり用いられなくなり、代わりに局所抗感染薬とか皮膚消毒薬といった用語が用いられる。

なお食品の腐敗防止に用いる防腐薬はpreservativesの訳です。


●その他

消毒薬は殺滅できる微生物の種類によって微生物殺滅薬(germicides)、細菌殺滅薬(bacteriocides)、真菌殺滅薬(fungicides)、ウイルス殺滅薬(virucides)、芽胞殺滅薬(sporicides)などと呼ばれます。


なお、農薬(pesticides)における殺菌剤(fungicides)は殺細菌薬と殺真菌薬の総称です。


消毒薬の効力比較・石炭酸係数(phenol coefficient, PC)



各種消毒薬の試験管内殺菌力は石炭酸係数で表す。石炭酸係数の測定には通常グラム陰性菌の腸チフス菌とグラム陽性菌の黄色ブドウ球菌とを用い、10分間の接触で殺菌する最小濃度(最大希釈倍数)を石炭酸、被験薬の各々について求めて比較します。


すなわち消毒薬では抗菌性薬と異なって、静止状態の微生物を殺滅することが要求されます。


石炭酸係数は各種の消毒薬の効力を比較する時の基本的数値になっている。

消毒薬の効力検定


・腸チフス菌の24時間培養液を作る

・消毒薬の倍数希釈液5mlを20℃に保ち、培養菌液0.5mlずつを入れる。

・5’、10’、15’後に一白金耳を二次培養液に移し、37℃、48hr培養して結果を読む。5’で陰性で10’で陽性の濃度を求めて石炭酸との希釈比を算出する。



通常の方法では消毒薬と菌液を短時間接触させてからその一白金耳を二次培養液に移して培養し、濁らない最小濃度を求める。


すなわち細菌との10分間の接触で殺滅する最低濃度をグラム陰性菌で測定したことになる。消毒薬に対する抵抗性は陰性菌が強いが通常はブドウ球菌を用いて陽性菌での石炭酸係数も測定します。

殺芽胞力

芽胞は外部の環境が良くなれば直ちに増殖型に変わるようになっているので、その外被膜は水や小型イオンを通過させる。しかし消毒薬の多くは容易には通過できないので、芽胞に有効な消毒薬はない。



芽胞に対する消毒薬の効果を調べる最も単純な方法は液体培地法です。枯草菌のような芽胞形成菌を試験管内で数日間培養すると殆ど全ての菌が芽胞化するので、消毒薬を添加接触させてから菌を分離して二次培養によって生死を判別する。


元来、芽胞は乾燥状態や布などの繊維に付着した時に強い消毒薬抵抗性を示すので、液体培地法での成績はあまり信用されていない。


綿糸に芽胞を付着させて乾燥した試験系で、芽胞に対する消毒効果を調べる方法も開発されています。

真菌への効果

最も多く用いられる試験系は白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)です。10日間培養してその無性胞子を集めて混濁液を作り、被験物質を含む液に加えて5~15分間接触させる。

二次培養によって効力を判定する。


鶏コクシジウムオーシストへの効果

コクシジウムのオーシストへの消毒効果を調べる方法では、①Eimeria tenellaのオーシストを採取し、②試験管内で被験物質と数十分間接触させ、③遠心分離、洗浄し、④初生雛に感染させ、⑤1週間後に雛の盲腸を組織病理学的に調べ、⑥病変の程度を4段階に分けて判定する。


⑦もし消毒薬の処理によって病変が軽度になれば有効であったと判定する。


試験に用いるオーシストの採取には感染雛の①盲腸内容から採取する。②糞から採取する、③糞から採取してから放置して胞子化させるなどの方法が用いられる。現在用いられているオーシスト消毒薬は盲腸から採取したオーシストには有効ですが、胞子化したオーシストに対する効果は極めて低い。


殺ウイルス作用

消毒薬の殺ウイルス作用とは不活化を意味する。ウイルスの活性は細菌のようにその増殖性で調べることは困難であるので、高等動物の生存細胞に病変を起すか否かで調べる。


実際には鶏胚とか培養細胞に接触して50%感染用量の変化を調べる方法が最も多く用いられる。


ウイルスのうち大型ウイルスはコレステロールと結合し易いので疎水性ウイルスと呼ばれ、小型ウイルスにはこのような性格がないので親水性ウイルスと呼ばれれています。


一般にはアルキル化酸やハロゲン系は両者に有効ですが、アルコール、陽イオン・両性イオンは親水性ウイルスだけが有効だといわれている。


消毒の対象になるウイルスは空気中か水中ににあり、通常は高等動物の細胞分屑に含まれている。この状態のウイルスは時間と共に自然に不活化するので、洗浄だけでも衛生化が可能です。


消毒薬の効果に影響する要因


●温度

一般に消毒薬の殺菌力は温度の上昇によって高まります。しかしヨウ素や塩素などでは温度の上昇によって蒸散するために効力が低下することがあります。


●濃度

ホルマリンや塩素では濃度に比例して殺菌速度が速くなる。陽性イオン系では濃度の2乗に、またフェノールでは5乗に比例して殺菌速度が速くなる。


●pH

消毒薬の多くは電解質です。原則的には非解離性(分子型)では有効ですが、解離型(イオン型)では無効です。


したがって塩基性物質は酸性での効力が低く、酸性物質はアルカリ性になると効力が落ちてきます。


アルコールやホルマリンのような中性物質はpHの影響を受けにくい


●有機物質

消毒薬は一般に反応性の強い物質であるから、血清、汚物など多くの有機物質の影響を受ける。フェノール系薬物は影響が少ない消毒薬として知られている。


消毒薬に対する耐性菌



消毒薬に対して耐性菌が発生することは極めて稀です。しかし病院で常置している消毒薬に緑膿菌が増殖して感染源となって多数のヒトが被害を受けた事例の報告が複数あります。


耐性菌発生が報告されている消毒薬は陽イオン系、両性イオン系消毒薬です。

消毒薬の使用法


●外科領域での使用

患畜の術野、損傷部位および術者の手指など、皮膚消毒には刺激性の低い消毒薬を用いる。

器具の消毒には滅菌の目的が達せられるように滅菌用消毒薬を用いる。


●産業領域での使用

畜舎内外や器具の消毒は家畜の環境や生産物の衛生状態の改善が目的であるから、衛生消毒薬が用いられます。


養鶏、養豚では畜舎の天井に配管して消毒薬を畜舎全体に加圧散布するような方法が普及しています。この方法によって空気も洗浄されるので衛生効果は高い。


●養蚕・養蜂

この領域では真菌による感染症が多いので、

滅菌薬による器具消毒が主体になる。


環境汚染



使用済みの消毒薬の廃棄は環境汚染の可能性がある。


水質汚濁防止法では排水中の汚染物質を強く規制しており、重金属系消毒薬の使用は不可能になっています。また、フェノール系の排水規制もかなり厳しい。

キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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