ウズラで注意すべき疾病としては
ニューカッスル病、マレック病、潰瘍性腸炎(ウズラ病)およびコクシジウム症などがありますが、ワクチンの普及もあり病気の発生は大幅に減少してきています。
しかし、種鶉や孵卵などの衛生管理対策の不備からサルモネラ症、真菌症、鶏脳脊髄炎などが発生しています。
海外では、トリアデノウイルスに起因するウズラ気管支炎の報告もあります。
ニューカッスル病
鶏のニューカッスル病(ND)と同じウイルスに起因します。感染ウズラでは、軟便、緑便が目立ち、産卵低下、無斑卵、軟卵を産出します。脚麻痺などの神経症状を示すものもみられます。しかし、鶏と異なり呼吸器症状を示すことが少ないです。
死亡率は成ウズラでは10%程度ですが、産卵開始の日齢のものでは50%に達することもあります。肉眼検査では、脾臓は腫大し、卵巣に出血卵胞や軟卵胞が良く観察されます。しばしば卵巣や卵管は萎縮し、卵墜がみられることがあります。
鶏でのNDと異なり、腺胃や小腸での出血は軽く、呼吸器病変は乏しい。特徴病変が乏しいので、診断は血球凝集抑制(HI)抗体価の測定やウイルス分離で確定する必要があります。
予防には生ワクチン噴霧接種が行われますが、生ワクチンの3ドーズを筋肉内接種する方法も汚染地では行われています。
マレック病
マレック病ウイルスはウズラにもマレック病(MD)を起こします。ウズラのMDは、6~7ヵ月齢以降に多発し、2~3ヶ月の経過で50~60%の死亡率に達することがあります。神経症状はみられず、食欲の低下、元気消失および削瘦を示します。
肉眼検査では、肝臓や脾臓の腫大、十二指腸の壁の白色および慢性肥厚、腺胃の腫大が観察されますが、鶏でみられるような白色の結節はあまり認められず、直径1mm程度の黃白色巣です。組織学的には、リンパ様細胞の腫瘍性増殖が肝臓、脾臓、卵巣および腸管粘膜に観察されます。まれに末梢神経にリンパ球やプラズマ細胞の浸潤もみられることがあります。
本病により肝臓に形成される小黃白色巣は、細菌性の壊死巣に類似しているので、病理組織学的検査により診断する必要があります。予防には鶏の場合と同じように七面鳥ヘルペスウイルス(HVT)を14~35日齢のウズラへの接種をすることが有効
サルモネラ症
孵化後数日の雛が羽毛を逆立て、水様便や白色下痢便を排泄し死亡します。原因は主としてSalmonella Typhimurium, S.London, S.Infantisなどで、死亡率は5~70%と発生群により様々。肉眼検査では、肝臓の網状壊死巣や出血、脾臓の腫大および盲腸の膨大とチーズ様物の貯留が観察されます。
成鶉では、頭部の皮下に腫瘤を形成することがある。組織学的には、肝臓や脾臓に巣状壊死が多発し、盲腸などの下部腸管にはカタル性から多くの滲出物を伴う偽膜性の腸炎が観察されます。頭部の皮下織には大きな膿瘍がみられ、これらの病巣内にはサルモネラが検出されます。
発生予防や治療には感受性を示す抗菌剤(ニューキノロン系)が有効で親鳥からの介卵(垂直)感染が疑われるときは、種鶉を含めた養鶉場における浄化対策が必要です。この他、養鶉場に出入りするネズミや昆虫の駆除、養鶉機器や器具の消毒が必要です。
潰瘍性腸炎(ウズラ病)
発病したウズラは元気、食欲がなく羽毛を逆立てて目を閉じ佇立し、また、水様の下痢をします。急性の経過で多くのものが死亡し、肉眼検査では、小腸下部、盲腸に出血や潰瘍か観察され潰瘍は限界明瞭で、大きさはさまざまですが直径は5mmの大きさを示すことがあります。
潰瘍はしばしば穿孔し、穿孔性の腹膜炎を起こします。肝臓には、黃白色の小壊死が散見され脾臓の腫大や出血、壊死が認められることがある。組織学的には、腸管の潰瘍部や肝臓の壊死巣内に、C.colnumに類似する細菌塊が多数観察されます。
本病はヒストモナス症(黒頭病)、コクシジウム病などと併発していることが多いため診断にはこれらとの類似鑑別が必要です。ストレプトマイシン、テラマイシンなどの薬剤が治療に有効
真菌症
孵化後間もない2~3日齢のヒナで発生することが多い。発病したヒナは目を閉じ、開口呼吸を示します。発病後、3~5日の経過で死亡し、30~40%の死亡率を示します。ムコール属の感染では神経症状を示すことがあります。
肉眼検査では、肺の気管支周囲や気嚢に白色の病変が観察され、組織学的検査では菌糸などの増殖を伴った肉芽腫性病変が観察されます。本病の治療は困難であるため、孵卵器、育雛器、ひな箱などの消毒を十分行い、予防に努める必要があります。
寄生虫症
コクシジウム病で問題になるのは、急性経過を示すEimeria tsunodaiと慢性経過を示す、E.bateriおよびE.uzuraによるものです。E.tsunodai感染では、産卵低下や血便の排泄がみられ死亡することがあります。
盲腸が病変好発部位で、盲腸の腫大や萎縮がみられます。盲腸内には出血やチーズ様物が観察され、E.bateriやE.uzura感染では、十二指腸から小腸下部の粘膜に微細な白色病変が観察されます。
予防・治療にはサルファ剤などの投与が行われています。Metroliasthes coturnixによる条虫症では腹部が膨満し、産卵低下がみられます。診断は虫体の確認および条虫症は甲虫が中間宿主となるので、殺虫剤の散布によりそれらを飼育舎に近づけないようにします。治療はビチオノールを150~200mg/kg投与します。