正常反射
脊髄反射として健康動物に見られるものは多数ありますが、普通の検査に用いられる簡単なものを挙げると、つぎのとうりです。
(ⅰ)屈曲反射flexor reflex
四肢の先端を圧迫したり、つまむと肢をまげる反射で、前肢ではC₆-₇-₈、T₁が関与し、後肢ではL₄-₅-₆、S₁-₂-₃が関与します。
(ⅱ)膝蓋腱反射knee jerk
膝蓋骨の下部で中膝蓋靱帯を軽くたたくと、伸筋群が一瞬はたらいて膝関節を伸長する。L₃-₄-₅-₆が関与する。
(ⅲ)伸展反射extensor thrust reflex
肢の蹠面に軽く力を加えて趾先をわずかに開くように押すと肢を一瞬伸長する。
前肢ではC₆-₇-₈、T₁~₂、後肢ではL₄-₅-₆-₇、S₁が関与する。
このほか肛門反射(S₃-₄-₅)、挙睾反射(L₁~₂)などの表層反射があり、これは脊髄反射ですが、さらに上位の中枢も関与している。
病的反射
また主として病的な状態で見られる脊髄反射も数多いですが、小動物では次のものが検査に用いられています。
(ⅰ)対側伸展反射crossed extensor reflex
一側に屈曲反射をおこさせると同時に反対側の肢を伸展する反射。
(ⅱ)搔腹反射scratch reflex
膁または肩に適当な刺激を与えると後肢で物を搔くような屈伸運動をする。
正常でもおこることがありますが、病的にははげしいことがあります。
以上のような反射の異常からも、大体の病変の高さを推定することができますが、この標準は下記に示す通りです。
脊髄反射の異常と部位
前肢
両側とも正常反射のないとき
C₆~₇~₈、T₁の障害または中枢性
一側のみ反射のないとき
同側性の障害
反射が異常に強いとき
C₆より上の障害
対側伸展反射
広範な横断性障害
後肢
両側とも正常反射のないとき
主として腰椎下部(L₄以下)
一側のみ反射のないとき
同側性の障害
反射が強いとき
主として腰椎上部(L₃)以上
強直のはげしいとき
T₁₂~L₃に椎間板ヘルニアのあることがある
搔腹反射
上位に異常のあるときはげしい