脊髄機能の検査法
いうまでもなく脊髄は体表の知覚や筋、関節などの運動性感覚を求心性に伝導したり、あるいは運動性刺激を遠心性に伝導したり、反射弓を形成したり、また内臓、血管などに影響をおよぼしているため、脊髄の障害では、その部位や障害部の高さによって、まちまちの症状が現れます。
一般に脊髄の障害の検査法としては知覚の検査、運動性の検査および反射の検査が行われ、これらの結果その障害部の高さ、性質などが推定され、さらに単純X線撮影、脊髄腔造影、筋電図などが必要に応じて用いられる。
体表の知覚は針、剛毛などによって体表を刺激することによって検査されますが、この際左右対称に行うことと、体表一面について行って知覚の全麻痺、鈍麻、過敏の部などについて、その限局性を調べることが大切です。
深部感覚の検査のためには、通常、肢を異常な位置におくと、正常な場合は、すぐ元に自発的にもどりますが、異常な深部感覚の場合にはもどらない。
運動性の検査は、歩様や障害物通過の状態を調べる。
もちろん骨、関節、筋、腱などをあらかじめ良く検査してその異常をもたしかめておかなければなりません。
これらの二点が検査されると、その異常から脊髄分節の異常部の高さが推定される。このため脊髄分節からの神経分布を知る必要があり、これを犬の例について示すと下記の通リです。
脊髄分節における主な運動肢の分布(犬)
分節
頸椎(C)₃~₄~₅
分布
頸部諸筋
分節
C₆~₇~₈
胸椎(T)₁
分布
前肢上膊神経叢
分節
T₂~₈
分布
肋間神経
分節
T₉~₁₃
分布
下部および側下部腹壁
分節
腰椎(L)₁~₂~₃
分布
側後部腹壁
分節
L₄~₅~₆
分布
股神経
分節
L₄~₅~₆
分布
閉鎖神経
分節
L₆~₇
仙椎(S)₁
分布
坐骨神経
分節
L₄~₅~₆~₇・S₁~₂~₃
分布
腰仙神経叢
反射には脊髄において形成されている反射弓のみが関与しているものと、さらに上位の中枢が強く関与しているものとがあります。