採食・嚥下された飼料は、噴門口ostium cardiacumを経て胃に達し、唾液や胃液と攪拌混合されてある程度消化が進み、幽門口ostium pyloricumを経て十二指腸に送られる。
馬、豚、犬などの単胃動物の胃は一個の嚢状をなしているが、動物によって多少形状を異にしている。
馬の胃は比較的小さく、噴門口につづいて前胃部(胃盲嚢)pars proventricularis(saccus cecus ventriculi)、帯状の狭い噴門部pars cardiaca、胃底(胃体)fundus ventriculi(corpus ventriculi)および幽門部pars pyloricaがある。
幽門部は幽門前庭vestibulum pyloricumと幽門管canalis pyloricusに分かれる。前胃部には腺を欠くが、他の3部にはそれぞれ噴門腺Gll.cardiacae、固有胃腺Gll.gastricae(propriae)および幽門腺Gll.pyloricaeがあって胃液を分泌する。
豚の胃は比較的大きく、構造はほぼ馬に似るが、前胃部は噴門口から漏斗状にひらいて噴門部につづき、噴門部には胃憩室diverticulum ventriculiがある。
犬の胃は大きく、前胃部を欠き、噴門口をとりまく狭い噴門部を経て胃底(胃体)につづき、幽門部は全体として細長く、前2者と同様幽門前庭および幽門管に分かれる。
胃の運動には、攪拌と蠕動とがあるといわれています。犬では、胃体の上部1/3から蠕動運動が始発して幽門括約筋に向かう。また正常で約1%程度の逆蠕動があるといわれる。
Auerbach神経叢およびMeissner神経叢、迷走神経および内臓神経によって運動が調整されています。胃液にはペプシン、凝乳酵素およびリパーゼなどが含まれ、ある程度まで消化が行われる。
最近、消化管ホルモンの研究が行われるようになりました。構造が明らかになったものは、胃幽門洞粘膜に存在するgastrin、上部小腸粘膜に存在するsecretin、motilin、GIP(gastric inhib-itory polypeptide)、VIP(vasoactive intestinal polypeptide)、CCK-PZ(cholecystokinin-pancreozymin)などであり、その他まだ構造不明のものが多く発見されている。
これらは胃酸分泌、胃運動はじめ、消化管の消化・運動に関与しており、その詳細は次第に明らかにされてきています。
検査法
食道から胃に送られた内容は、順調に消化されて十二指腸へと送られなければならない。種々の原因によって消化および内容通過が妨げられれば、それぞれの症状が現れる。
したがって、次のような検査法によってその状態を把握する。
視診:腹部の膨満は内容の停滞・増加、腹囲の減少は食欲廃絶・飢餓・嘔吐などでみられる。腸疾患との鑑別を必要とし、補助的診断に役立つ。
打診:胃内にガスが蓄積する時には鼓音、半鼓音を認める。
聴診:胃の運動を聴くことができるが、馬、豚では聴取しにくい。
直腸検査:大動物で利用されるが、馬の胃はほとんど触知し得ない。
X線検査:透視・撮影あるいは造影剤投与による観察が行われる。
内視鏡検査:胃粘膜の診断に用いられる。
その他:
吐物の検査、血液検査などが行われる。全身的症状の検査もあわせ行う。