牛の蹄は偶蹄で内、外の2蹄からなり、内蹄は第Ⅲ指(趾)、外蹄は第Ⅳ指(趾)の先端にあります。内外2蹄の間を趾間隙といいます。
前蹄は内蹄が大きく、後蹄では外蹄が大きい傾向があります。
蹄の角度(側望)は45~50°ですが、一般に前蹄より後蹄の方が角度がやや小さい。
蹄の構造
骨部(蹄骨・舠骨・冠骨)、弾力部(蹄球枕・趾間指球)、知覚部(蹄縁真皮・蹄冠真皮・蹄壁真皮・蹄底真皮)、角質部(蹄縁角皮・蹄壁・蹄底・蹄球)からなります。
ただ馬蹄と異なる点は、蹠枕と蹄軟骨のかわりに蹄球枕Ballenpolsterと趾間脂球Fettpolsterがあり、また蹄叉と蹄支がないことです。
蹄壁の角質は馬にくらべて一般に堅牢で、角細管は繊細でその数が多いですが、葉状層の表皮葉には副表皮葉がありません。
葉状層の高さは蹄壁の下半分に留まります。角質は蹄壁が最も硬く、蹄底および白帯がこれに次ぎ、蹄球の角質はほかより軟らかい。
蹄角質の成長と摩耗
角質の成長は馬にくらべて緩慢で、蹄壁は1ヶ月に5~6mm延び、蹄尖部が一新されるのには1年半くらいかかります。
放牧される牛の蹄はその間に自然に磨耗して成長とバランスがとれ、良好な蹄形を保つものが多いですが、舎飼の牛の蹄には磨耗が起こらずあるいは異常な磨耗を呈して、過長蹄や変形蹄になるものが少なくありません。
搾乳牛の削蹄(蹄形修正)は少なくとも6ヶ月ごとに実施します。
蹄の負重と蹄機
牛の蹄機は蹄の構造上、馬のそれとは異なり、負重時には主として趾間隙の開張によって地上からの反動を緩和し、脱重すれば原形にもどる。
また蹄球の基礎をなしている蹄球枕(馬の跖枕に相当する)と趾間部にある趾間脂球はいずれも結合織線維と脂肪組織によって構成されていて弾力に富み、蹄機に役立っています。
筋肉によって胴骨と結合している前肢骨とは異なり後肢の骨格は腸骨が関節で仙骨と直かに結合しているため、駐立時に体が動揺して左右の後肢にかかる重量が少しでも変動すると、それは直ちに左右両肢の内蹄と外蹄の負担重量を変化させます。
その変化は両側肢とも内蹄ではごく小さく、外蹄では大きい。
この負重量の変化は蹄角質の生成を促進する刺激として作用します。産歴を重ねた搾乳牛では一般に後肢の外蹄が内蹄より大きい。