
中和試験(neutralization test : NT):血清学的検査法
ウイルス感染症の診断に用いられる最も信頼性の高い方法です。
ウイルスと抗体を混合し一定時間反応させた後に(抗原抗体反応)、ウイルスに感受性のある動物、発育鶏卵、培養細胞などに接種し、ウイルスが抗体によって中和(不活化)されたか否か(残存ウイルス量)を調べます。
ウイルスの感染性の有無を指標とするため特異性は高い。
感染性の指標としては、動物では死亡、発病など、発育鶏卵では鶏胚の死亡、病変形成など、培養細胞では、CPE、プラック形成などが用いられます。
つまり、ウイルスが抗体によって中和されたかどうかは、これらの指標の変化の程度によって論じられます。
中和試験の目的は次の二つです
①分離ウイルスの同定
分離された未知のウイルスがどのウイルスグループに属するか決めるために行われます。
既知のウイルスに対する抗血清(抗体)と反応させた時に、分離ウイルスの感染性が阻止された場合、既知のウイルスと同じ抗原性をもつと判断(同定)されます。
②中和抗体の定量
ウイルス感染によって鷄などの宿主の血清中にどのくらいの量の中和抗体が出現したかを調べる(定量)、一般には連続的に希釈した検査血清と一定量のウイルスとを反応させ、そのウイルスの感染性の50%あるいはそれ以上を阻止した血清の希釈倍数を中和抗体価とします。
中和抗体の測定は、ウイルス感染症の診断において非常に有用。
通常、病気の急性期と回復期の血清(ペア血清)中の中和抗体価を測定し、ある特定のウイルスに対する中和抗体価が急性期の血清にくらべ回復期の血清中で明らかに上昇した場合、そのウイルスの感染があったものと判断できます。