一般に苦味を有するものの総称で化学成分も明らかではありません。
植物成分中広義の苦味質は極めて多くアルカロイドおよび配糖体の殆どが含有される。このうち有毒なものはチクトキシン、綿馬酸、フイルマロン、ピクロトキシン、ブロトアネモニンなどで、本邦には次の種類があり痙攣毒に属するものがおおい。
ネヅミコロシCoriaria japonica ドクウツギ科
種子、果実、茎葉の何れにも含有します。
コリアミルチンCoriamyrtin C₅H₈O₅およびツチンTutin C₅H₁₈O₆であり馬、牛の中毒があります。
(イヌゼリ、オオゼリ)Cicuta virosa(Cawbane or Water Hemlock)サンケイ科
全草殊に根部にシクトキシンCicutoxin C₉H₂₆O₃を有し馬、牛、豚の中毒例があります。
(シキビ、ハナノキ)Illicium religiosum モクレン科
葉、果実などにShikimin C₇H₁₀O₅その他があり、冬季緑草の少ないときに山羊、羊の中毒が多い。
症状
以上は何れも痙攣毒で延髄における痙攣中枢を刺戟し間代性強直痙攣をおこす。
馬の主徴は突然狂奔し、前軀に痙攣を発し、呼吸困難、発汗、流涎、体温上昇、脈細弱、心悸亢進、腸蠕動音消失、努責により肛門の多開、粘膜の充血、次で苦悶、騒擾、痙攣甚しく瞳孔散大、強直性痙攣発作あり2~3時間で斃死します。
胃腸内容物に特異な刺戟臭があります。
療法
初期には0.1~0.5%過マンガン酸カリ液の胃洗滌と内服を続けます。これは毒分酸化のためです。
痙攣に対しては抱水クロラール、クロロホルム等の麻痺薬、強心剤など対症的に処置します。