銅 Copper Cu ~ 原因

ビーブラスト・テキスト


銅中毒・原因



銅中毒は現在のところ人畜共に大いに減少しましたが、銅あるいは真鍮製の食料調製器や貯蔵器より来るもので、家畜では飼料をこれらの容器に入れ久しく空気に曝した場合、特に酸性、あるいは脂肪性のものは塩基性炭酸銅もしくは醋酸銅(共に緑青という)を形成して有毒作用を呈します。


これに関係のある飼料は酸敗乳、酸敗した残食の芋類、粥、サイレージ並びに魚油、蛹油、亜麻仁油、大豆油、菜種油等を含む油粕類です。


これらは銅を溶解して醋酸銅や炭酸銅の他に乳酸銅、林檎酸銅、酒石酸銅、枸櫞酸銅を生じます。就中最も中毒の多いのは醋酸銅を含有することです。


農業薬剤による場合は砒酸石灰のように硫酸銅その他の粉末を直接舐めるようなことは極めて少ないですが、溶液や撒布後の作物および果樹園の下草は相当注意を要します。


特にボルドー液の付着した稲藁は屢々問題になりますが、本剤は砒素、水銀剤などに比べると毒性の減退が早く且つ前記の通り撒布後10~14日を経過すれば急速に効力が減じますから、この点に留意すれば、中毒を防止し得ます。


これらのことは今後農業の普及を計るためにも、家畜の中毒を防ぐためにも、もっと正確な試験が必要です。


その他馬が硫酸銅の混入した小麦粉を食して中毒を起し、治療に用いた硫酸銅を創面より吸収して中毒した犬があり、この場合は0.6gの粉末でした。


仔羊も大量の酸化銅を与えると発病します。銅色素のうちシエールス緑、カルク緑、シュワインフルテル緑は銅よりも寧ろ砒素中毒です。


肥育中の仔羊の駆虫に誤って10%を含む硫酸銅液85ccを与え翌日発症し、また硫酸銅液の噴霧を行った池の水を飲んだ仔羊の慢性中毒がある。


銅剤の混入した人工乳を与え、仔牛の慢性中毒の起きた例が最近報告されています。金属銅は無害であって、これは犬の胃内に銅片を12年間も内蔵したが健康であつた例があり、野犬屠殺の際消化器中に銅銭を見出すことから中毒を起すものでないことが判ります。


鉱山乃至鉱業所より流出する廃水のうちには各種の重金属塩類を含み植生に有毒であることは所謂鉱毒事件として知られていますが、その中心となったものは主として銅で、硫酸銅、硫化銅などです。


而して家畜に対しては普通慢性中毒を起すべき筈ですが、現在までこれによる被害は確認されず寧ろ他の夾雑物殊に砒素、鉛に注意すべき問題です。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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