此れは最も近代に発見された鳥で、アフリカ(エチオピア区)には雉はいないと言われていたのですが、此の鳥の発見で、唯、1種類雉がアフリカに居る事が分かったのですから分類学上大変な発見だといわねばなりません。
アフリカにはホロホロ鳥とかウズラ、シャコ類は従来から知られています。
発見の模様は次の通りです。
1913年ニューヨークのアメリカ博物館のチェーピン博士はベルギー領コンゴーのイツウリ森林のアバクビ地方の土人の帽子に変わった羽を付けているのを発見し、此れを譲り受けて調べてみても何の羽であるか不明のままでニューヨークの博物館へ持ち帰ったのですが、其の後、1936年に彼がベルギーのコンゴー博物館を訪問の際、陳列品の中から2つの剥製標本を見出し、此の鳥の次列風切り羽根が自分が先にニューヨークへ持ち帰った羽と同一の物であることを発見しました。
此の剥製は1914年にコンゴーから此の博物館に届けられたものであったのですが、此れによって此の鳥が新発見の鳥、真正雉の1種であると断定され、チェーピン博士によってAfropavo congensisと学名が1936年に与えられました。
1947年に至り、チャールズ・コルディルという人が、アフリカのコンゴーで此の鳥を捕獲し、6羽の雄と1羽の雌をニューヨーク動物園へ送ったのですが、1羽の雌は8ヶ月後に死んだ為、ニューヨークでは雛を取ることは出来なかったのですが、2羽の雄は10年間もニューヨークで健在でありました。
然し、1959年と1962年の間に同じチャールズコルディールが、アントワープ動物園へ8つがいと1羽の雌を送ったのですが、また、アントワープ動物園から1つがいがロッテルダムのアペルマンの処へ送られたのですが、此処で、1960年に雛をとったのですが、6ヶ月目にアスペルギスで死にました。
然し、1964年にはアントワープ動物園で3羽の雛を孵す事に成功して、此の鳥の飼育の面における詳細が初めて発表されました。
コンゴー孔雀の原形とも称す可き鳥で、アジアの孔雀に比べて尾が短く、また羽に円紋がありません。頸と喉に裸出部が有り、雌雄ともに立派な直立の羽冠があります。
羽冠は白い剛毛と黒色の羽で成立しています。上脊から腰に至るまでは雄は緑色の羽で覆われています。顔の裸出部は青灰色ですが、頸には明るい赤色部があります。
雄の羽冠は白い剛毛はなく黒褐色です。雌は全体に黒褐色が強い鳥です。
此の鳥は自然界で1雌1雄制ですが、夜間雌雄で鳴き合います。前記のアントワープとロッテルダムの両動物園では巣箱を高処に設置して、卵は1~3日おきに2~3個を産み、27日~28日で孵化します。
卵の色はクリーム色か少し赤褐色を帯びております。前記の両動物園では熱帯植物を沢山植えた禽舎で、且つ温度は20℃に保たれ、湿度は90%にして飼われました。
雛に対する餌はカナリヤの餌に、ボウフラ、蟻の卵、バッタ、イナゴ、ハエなどの昆虫が与えられました。
此の鳥も自然に放置すれば、彼等の安住のすみかであるアフリカの森林が文明が開けて、やがて絶滅するであろうから今のうちに禽舎内での繁殖法の確立に全力をあげなければなりません。
コンゴー孔雀 Congo peacock
コンゴー孔雀