雌の生殖器の先天性異常、奇形(Congenital Abnormalities of the Female Genital System)
卵巣の発育不全あるいは部分的無形成は、牛では稀にみられます。馬では稀れで、さらに犬・猫にはきわめて稀れとされます。
卵管の部分的無形成ないし異常は豚にときどきみられますが、馬では稀れで、牛ではきわめて稀れです。
子宮頸管の異常(一角子宮)、子宮体の一部欠如、子宮角の部分的無形成は牛で時にみられることがあります。豚、犬でも一角子宮が稀れにみられる。
馬ではほとんどみられない。牛では重複子宮外口を稀れにみることがあります。
腟弁狭窄、部分的無形成、中腎管遺残症が牛に稀れにみられます。
また、牛で腟の上壁から下壁に達する肉柱がときどきみられるが、たいした通過障害にならず、自然に切れることが多い。
子宮脱および子宮反転(prolapse and inversion of the uterus)
牛と羊にときどきみられ、ついで豚に、馬、犬、猫にまれに発生します。
原因としては、子宮間膜付着が長い、努責が激甚、子宮の無力性弛緩、胎盤の停滞、骨盤、会陰部の重度の弛緩、難産時の強引な牽引などが挙げられます。
症状としてはほとんどの動物で、さまざまな程度の裏急後重、不安、疼痛、食欲減退、頻脈、呼吸数増加がみられます。
患畜は横臥ないし起立のまま脱出した子宮をぶら下げていることもあります。
脱出した子宮は浮腫状に腫大し、牛では完全な反転脱出が多い。時に子宮動脈などの切断によってショック症状を呈することがある。予後はさまざまです。
処置として、まず脱出した子宮を整復するまで、湿った布などで乾燥しないように清潔に保つよう努力する。横臥している場合は起立するようにするか、後軀を高くしてできるだけ子宮を傷害しないように留意する。
子宮は温生理食塩液など刺激の少ない消毒洗滌液で十分に洗滌します。整復のため、尾椎麻酔を行ったり、オキシトシンなどの子宮収縮剤を投与する人もある。
整復が不可能な場合、子宮に重度の裂創、壊死があったり、感染化膿のひどい時には、脱出子宮の切断または子宮切除術を行うことがあります。
牛、羊では脱出部分に膀胱、腸管の存在しないことをたしかめ、子宮間膜中の子宮血管の結紮などが外れないよう十分注意して行うと成功例も少なくないとされます。
馬では禁忌とされますが、犬ではしばしば最善の方法となることもあります。