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脳の先天性異常 ~ 脳の損傷(原因・症状・診断・治療法)


脳の先天性異常(congenital abnormalities of the brain)



家畜における脳の先天性異常は、生後間もなく、あるいはかなり経過してから、その動物の神経機能の異常により発見されます。


すなわち、盲目、聾、癲癇、運動失調、筋緊張、強直、震せん、麻痺などの症状が認められます。これらの先天性疾患は一般に難治で、予後不良のものが多い。

脳の損傷(injuries of the brain)



家畜における脳の損傷は、人にくらべて発生の機会が少ない。すなわち一般に、家畜では頭蓋骨が厚く、側頭筋に広く覆われ、また頭部の体重比が人にくらべて低いため、転倒時や打撲をうけた場合の脳への衝撃が少ないことなどが理由としてあげられます。


頭部の損傷は脳の器質的変化の有無、ないしはその変化の状態によって症状を異にし、軽いものでは、脳震盪程度のもの、また生命には異常はないが脳神経障害を後遺するもの、さらに重篤のものでは受傷時に即死あるいは昏睡状態に陥ってまもなく死亡するものがあります。


したがって、患畜の神経機能検査は十分に行い、すみやかに対症処置をとるとともに神経症状に対する治療の可否を判断し、あるいは適確な治療方針をたてなければなりません。

原因について

頭部の打撲や転倒時に発し、犬、猫に多くみられる。


症状



犬や猫で頭部に強い打撲を受けた場合、とくに外表に損傷がなくても脳へ強い衝撃が加わるときは脳震盪をおこす。


脳の反射機能の一部が消失し、一過性に意識の喪失や反射の減退または消失、呼吸・脈拍の不整、筋弛緩などを招くが、脳の器質的変化がさほど無いため、一次性ショックの症状を表してまもなく回復するか、あるいは徐々に軽減して、おおむね24時間以内に回復する。


頭蓋骨の圧迫性骨折や頭蓋内出血をみる場合は、脳の圧迫により、強直性ないし間代性痙攣、嘔吐など、あるいは意識の喪失をきたすものが多い。


また、脳に器質的変化がおこっている場合は、後弓反張や上記のような痙攣、瞳孔反射の消失などの脳神経障害を発し、また麻痺症状の現れることが多い。


一般に、体温および血圧は脳圧亢進や感染がある場合に上昇し、一方ショック状態ではともに下降する傾向があります。


また重症のものでとくに除脳(脳の一部欠損)、脳圧亢進、脳浮腫があるときは昏睡、嘔吐、痙攣、強直、麻痺、過高熱、頻脈または徐脈、高血圧性徐脈または不整脈、呼吸数の増加または緩徐あるいは一時停止、頸頭部強直、瞳孔の異常(一側の散瞳は同側の血腫か挫傷。両側では重度の広範な挫傷を示し、予後不良)などが見られる。


大動物で、墜落や強烈な打撲を受けた場合、脳震盪を発し、起立および歩行不能、脈拍不整、嘔吐などの症状がみられますが、一般にこれらの症状が明瞭でないことが多い。

診断



脳の損傷の診断には一般臨床検査、とくに詳細な神経機能の検査と同時に、血液検査や髄液検査ならびに頭部のX線検査(単純撮影、脳血管造影、気脳法、コンピューター断層写真撮影など)および脳波の検査が用いられています。

治療法



ショック症状を呈しているものは安静を旨とし、経過を観察しながら十分なショック療法を行う。緊急処置法としては一般に次の方法がとられる。


(ⅰ)鼻腔や口腔、咽喉頭などに吐物や血液が存在し、あるいは閉塞している時は、ただちに清拭または吸引除去を行って、気道を確保しなければならない。


虚脱状態にあるときは、気管チューブを挿入して酸素吸入を行い、また鼻骨や口蓋裂傷などがある場合は、気管切開により気管チューブを挿入する。


(ⅱ)患畜がショック状態や麻痺に陥っている場合は、なるべく平らな台上において静かに検査や処置を行う。もちろん、運搬する場合も体をむやみに動かす操作は避けなければなりません。


患畜が暴れる時は、麻酔剤よりもむしろ鎮静、鎮痛剤を用いるべきです。体温の下降している場合は保温に努め、また室温についても十分考慮すべきです。


意識が喪失しているときは、胃カテーテルによる栄養物の投与や避腸栄養および排糞排尿についての処置を忘れてはならない。


(ⅲ)頭部損傷で感染の疑いがあるときは、抗生物質やサルファ剤を用い、また脳浮腫に対しては、昇圧剤(カルニゲン、エフォチール)、脳血管拡張剤(ニコチン酸、塩酸パパべリン)、副腎皮質ステロイド剤、浸透圧利尿剤(マンニトール)および50%ブドウ糖液などが投与される。


(ⅳ)頭部手術(開頭脳手術osteoplastic craniotomy)は頭骨の陥没骨折、骨片の脳内陥入、脳内出血、脳内異物、汚染などの場合に行われます。


いずれも術野に対して剪毛と剃毛を広く完全に行い十分に消毒する。


ハロセン吸入麻酔下で頭背部皮膚を正中切開し、左右の側頭筋を正中から両側に向かい鈍性剥離して、頭蓋骨を露出する。次いで球状骨錐、線鋸、硬膜鉤、硬膜鋏、電気メスなどを用いて開頭したのち、脳手術を行います。


人医の脳外科における手術法に類似していますが、いまだ適応症の診断や技術的な面においてのこされた問題が少なくない。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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