不完全骨折、完全骨折
骨折のタイプによって不完全骨折(不全骨折)incomplete fractureと完全骨折complete fractureに区別されます。
不完全骨折には骨亀裂(fissure fracture)および骨屈折(infraction)があります。骨亀裂は骨皮質の一部に細い亀裂が生じたもので、X線検査によってはじめて確診されるのがふつうです。
骨屈折は、幼畜のいまだ堅牢でない骨では外傷性に、また骨栄養障害がある場合には突発性に、発生するもので、屈側の骨皮質は強く屈折して、骨髄腔内に折れまがり、対側の骨皮質ははじけて断裂するか、または断裂することなく骨膜下でまがっている(生木骨折、green stick fracture)。
完全骨折は、骨折線の走向によって、横骨折(transverse fracture)、斜骨折(oblique fracture)、螺旋骨折(spiral fracture)、縦骨折(longitudinal fracture)、T字形骨折(T-shaped fracture)、Y字形骨折(Y-shaped fracture)、蝶形骨折(butterfly fracture)に分けられます。
骨が3個以上数個の骨片に分かれた骨折は、多発性骨折(多数骨片骨折multiple fracture、ただし数個の骨に同時に骨折が発生した時にも、多発性骨折という語が使われる)で、そのうち尖鋭な骨の薄片が多数生じた時には、細片骨折(splintered fracture)ということがあります。
また大小多数の骨片に粉砕された時は粉砕骨折(comminuted fracture)と呼ばれます(なお多数骨片骨折をもあわせて「粉砕骨折」と総称することがあります)。
管状骨では、強い外力が長軸の方向にはたらいた時に、骨幹が骨端の海綿質内に打ち込まれて嵌入骨折(impacted fracture)(一種の圧迫骨折)となることがあり、逆に種子骨や膝蓋骨の横骨折の際に、筋、腱、靭帯に牽引されて骨片が離開したものは、離開骨折(distracted fracture)と呼ばれます。
頭骨のような扁平骨に圧迫骨折がおこって骨が陥没したものは、陥没骨折(depression fracture)です。
射弾骨折の場合には、粉砕骨折、蝶形骨折、穿孔骨折(puncture fracture)など、さまざまの形状をとります。