塩素(chlorine) ~ グラム陰性菌の細胞壁も容易に通過するので、陽性菌に対しても陰性菌に対しても等しく有効



ハロゲン含有化合物(halogen-containing disinfectants)

消毒薬として用いるハロゲンは塩素とヨウ素であり、いずれもその酸化力によって細菌を死滅させる。


しかし他の酸化剤(H₂O₂など)より殺菌力が強いので酸化以外の機序も関与している可能性があります。

塩素



塩素は水に溶解すると次亜塩素酸(hypochloric acid)になる。


Cl₂+H₂O→HCIO+HCI


水溶液中の次亜塩素酸はイオン型と分子型で存在しますが、その存在比はpHで異なる。


HCIO ⇄ H⁺ + CIO⁻


分子型の次亜塩素酸だけが殺菌力を持ち、CIO⁻やCI⁻には殺菌力がない。次亜塩素酸はpKa7.6の酸であるから、pH6以下では殺菌力が強いが、それ以上では急速に効力が落ち、pHが9以上では分子型が事実上存在しないので殺菌力が極めて弱くなる。

有効塩素(available chlorine)



塩素や塩素含有化合物の消毒液中の濃度は有効塩素濃度で表現する。また塩素含有化合物には有効塩素含有量(%)を表示する。


有効塩素は一価の酸化力のある塩素の原子量合計と分子量の比で表す。たとえは、次亜塩素酸は次式に従って他の物質を酸化する。


HCIO→HCI+O²⁻


すなわち次亜塩素酸の1個のCI原子はCI⁺→CI→CI⁻と2原子価相当の還元を受け、酸化力のないCI⁻になる。実際には各化合物の有機塩素含有量は測定して表す。


次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素含有量はヨードメトリーなどの方法で酸化力を測定します。その他の化合物では酸化力を測定するか、殺菌力を次亜塩素酸ナトリウムと比較して求める。

殺菌作用



塩素は分子型の次亜塩素酸として細胞膜を通過し、細胞膜や原形質の蛋白を酸化し変性させると考えられています。


この酸化は次亜塩素酸から生じた発生期の酸素による酸化です。グラム陰性菌の細胞壁も容易に通過するので、陽性菌に対しても陰性菌に対しても等しく有効です。ウイルス、芽胞には高い濃度が必要。


塩素は反応性が強いので有機物の影響を強く受けるし、また脱色(漂白)作用も強い。


消毒薬として用いられる薬物は次亜塩素酸塩か有機クロラミン(-N-CI,-N-CI₂)化合物です。クロラミン類は水溶液で容易に塩素(CI⁺)を放出し、放出された塩素は次亜塩素酸になる。

●次亜塩素酸ナトリウム


通常5%水溶液として販売されており、水で希釈して用いる。皮膚消毒、防疫消毒に用いますが、酪農器具の消毒薬としては最も多く用いられる消毒薬です。


この化合物は食品添加物に指定されているために残留したときに申し開きの余地が残る。


市販品は通常NaOHを安定剤として加え、pHを10以上にしてある。したがって水で希釈しただけではどの程度の消毒力があるか疑問です。


用時に酸を加えることは危険です。


●サラシ粉(chlorinated lime)


次亜塩素酸カルシウムと塩化カルシウムの混合物で、通常30%以上の有効塩素を含有している。主として防疫消毒(宿舎などにまく)に用いる。


●二塩素イソシアヌール酸(dichloroisocyanurate)


クロラミン系消毒薬で有効塩素64%(理論値)を含む。K塩かNa塩の顆粒剤で販売され、用時に水に溶解すると発生期の塩素が発生します。


器具の消毒や防疫用に用いる。
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