呼吸器循環・体液平衡

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救急療法(Emergency Treatment)

救急処置を必要とする急患の通知を受けた場合は、まず患畜の全身的状態と損傷の部位や程度を聞き、診療にあたっては、次のような順序で手際よくすみやかに行う必要があります。診断・治療に必要な検査脈拍、呼吸、体温、血圧の測定、瞳孔、体表および天然孔、...
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牛のコバルト欠乏症 ~ 成長期の幼若牛に、柔らかい牧草の多い早春期に発生し易い

子牛が2か月齢を過ぎるとルーメン機能が十分に発達し、粗飼料の摂取が多くなります。従って多量のプロピオン酸が吸収されて利用されるのでVB₁₂の必要量が多くなります。しかし低コバルト地帯では、コバルト補給が間に合わずにルーメン内のVB₁₂の生産...
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葉酸(folic acid) ~ 鶏は飼料中の葉酸が欠乏すると貧血やペローシス(腱の変位による運動障害)を発症します

葉酸は抗貧血作用を持つ水溶性ビタミンで、活性型は5-メチル四水素葉酸(MeH₄葉酸)です。植物や微生物は活性型を合成するし、食料・飼料中にも活性型で存在します。初期の研究では抽出過程で安定で不活性型の葉酸に変ったが、この物質も欠乏動物に経口...
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ビタミンB₁₂(vitamin B₁₂), シアノコバラミン(cyanocobalamin)

ビタミンB₁₂(VB₁₂)は抗貧血性の水溶性ビタミンで、分子内にコバルトを含むので赤色の結晶になる。動物や植物にはVB₁₂を合成する能力がなく、全てのVB₁₂は土壌中や腸内の細菌に由来する。動植物はVB₁₂を吸収して利用する。高等植物は体内...
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硫酸鉄(ferrous sulfate,経口用鉄化合物) ~ 貧血で最も多いのは鉄欠乏貧血であり、その予防治療に鉄化合物が用いられる

貧血で最も多いのは鉄欠乏貧血であり、その予防治療に鉄化合物が用いられる。経口投与する鉄化合物には水溶性の鉄塩を用いる。硫酸鉄(硫酸第一鉄)は最も汎用される化合物です。経口吸収人では二価鉄の経口吸収率が三価鉄より高いが、鶏やラットの試験では、...
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デキストラン鉄(iron dextran complex,注射用鉄化合物)

デキストラン鉄は水酸化第二鉄と低分子デキストランとの複合化合物で、通常の製剤は1ml中に100mgの鉄を含有する筋注用製剤です。人ではアレルギーを起こしやすい薬物に分類されていますが家畜での過敏症は極めて稀です。臨床応用動物用医薬品としては...
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ワルファリン(warfarin) ~ 慢性的な血栓症の治療(予防)に経口投与で用いる

1920年代にカナダで変敗スイートクローバ(サイレージ)による牛の集団中毒が発生しました。この中毒は全身性の出血斑が特色であり、原因物質はクマリンの誘導体でした。この知識から経口投与で有効な抗凝固薬として多くのクマリン誘導体が作られたが、ワ...
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ヘパリン(heparin) ~ 治療薬としては急性的な血栓症に用いる

牛の肺か豚の腸粘膜から得られる抗凝固性のムコ多糖類。分子量は5千~1万5千で分子内単糖の殆どが硫酸化されているので強酸性の物質です。Na塩かCa塩のいずれかで用いる。重量あたりの活性が一定しないので生物検定法での単位で表現する。体内動態静注...
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アミノカプロン酸(ε-aminocaproic acid),トラネキサム酸(tranexamic acid)

アミノカプロン酸はプラスミノーゲン活性化酵素の活性化を阻害し、プラスミンの形成を抑制する。血液凝固抑制薬の過量投与による凝固不全症に特に有効性が高い。また出血性疾患の治療に用いる。通常は経口的に投与する。静注では副作用の危険性があるので、点...
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局所止血薬(local hemostatics)

出血局所に適用する止血薬の種類も多い。古くは塩化第二鉄による局所凝固法が用いられたし、皮下血管の出血に対するエピネフリン液の適用は現在でも用いられています。いずれにせよ薬物による局所止血は有効性の高い方法ではない。トロンビン、フィブリノーゲ...
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ビタミンK(vitamin K, VK) ~ 全身性止血薬(systemic hemostatics)

全身性止血薬(systemic hemostatics)血管が破綻した場合にどの程度の出血になるかは、①破綻した血管の種類・破綻の程度と周辺組織の状態、②血小板の性格と量、③血液の凝固性、④繊維素溶解因子などの抗凝固活性の状態で決まる。以上...
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輸液 ~ 輸液の第一の目的は脱水・水分過剰などの水分代謝異常や電解質平衡異常の補正

輸液の第一の目的は脱水・水分過剰などの水分代謝異常や電解質平衡異常の補正です。さらに手術時の腎障害防止、中毒時の毒物排泄の促進、食欲不振患畜への栄養分補給などにも用いる。輸液の基本成分注射用蒸留水輸液の投与量は体重の10%以上になる可能性も...
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カリウム代謝

カリウムの体内動態哺乳動物の体内には平均で50mEq/kg程度のK⁺がありますが、全体の98%以上が細胞内に存在し、細胞外液中には3.5~5mEq/lしか含まれていない。K⁺は①細胞膜の静止電位を維持し、また②細胞内浸透圧を外液より高く保つ...
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ショック(shock) ~ ショックは死戦期の病態であり、末梢循環不全のために末梢器官への酸素補給が不十分になることが最も顕著な特徴

ショックは死戦期の病態であり、末梢循環不全のために末梢器官への酸素補給が不十分になることが最も顕著な特徴です。ショックの種類病因的には3種類に大別されている。血液量減少性ショック出血、外傷、火傷、下痢などが原因になる。中心静脈圧の低下のため...
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体液の浸透圧平衡

体内の水分と塩分動物は常に体液水分を排泄している。呼気に失われる水分は純粋であり、静止時でも20ml/kg/day程度が失われる。また発汗によって失われる水分も純粋です。(一時に多量に発汗した時の汗は間質液の組成に近づく)。これらの排泄を不...
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アシドーシスとアルカローシス

血液の平均pHは7.4で、許容変動範囲は±0.1以下に保たれている。血液の緩衝系では炭酸・重炭酸塩系が最も重要な役割を演じている。この系は一般にHenderson-Hasselbalch式で表されている。pH=pKa+log$\frac{(...
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浸透圧利尿薬(osmotic diuretics),マンニトール(mannitol)

浸透圧利尿薬と呼ばれる薬物は、①非電解質で、②糸球体では血漿の濃度で濾過され、③尿細管で再吸収されず、④浸透圧による作用以外の薬理作用を持たない物質群です。このような性格のために比較的大量の投与が可能であり、細胞外液浸透圧を上げる。代表的薬...
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炭酸脱水酵素阻害薬(carbonic anhydrase inhibitors),アセタゾラミド(acetazolamide)

薬理作用炭酸脱水酵素は末梢組織で炭酸ガスと水から重炭酸(炭酸水素酸)イオンを作り、肺では重炭酸イオンから炭酸ガスと水を作る。さらに体内の全ての分泌液中の重炭酸Na量は分泌細胞中のこの酵素の活性によって決まるので、各々の分泌液のpHの決定要因...
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チアジド系利尿薬(thiazide diuretics),ヒドロクロロチアジド

体内動態ヒドロクロロチアジド(hydrochlorothiazide)は消化管から速やかに吸収されるので、経口投与後1~2時間程度で利尿作用が発現する。血液中では蛋白との結合率が高く、腎以外の組織には殆ど分布しない。腎では近位尿細管から分泌...
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カリ保持性利尿薬(potassium sparing diuretics) ~ この系の利尿薬は遅効性です

この系の利尿薬は遅効性です。スピロノラクトン(spironolactone),アルドステロン拮抗薬副腎皮質から分泌されるアルドステロンは腎集合管でのNa⁺の再吸収を促進し、尿中へのNa⁺排泄量と尿量を減少させる。したがってその拮抗物質は利尿...
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ループ利尿薬(loop diuretics),フロセミド(furosemide)

ループ利尿薬は高用量での利尿効果が他の群の利尿薬の最高効果よりかなり高いので高最高効果利尿薬(high ceiling diuretics)とも呼ばれています。最高効果では糸球体濾過量の1/4を排泄させるので、生理的な尿排泄速度の20倍にも...
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抗不整脈薬(antiarrhythmics) ~ 抗不整脈薬は4種類に大別される

家畜の不整脈で治療対象になるのは小動物と馬ですが、どちらの動物種でも迷走神経性の不整脈が生理的に発生する。さらに成犬では呼吸性の不整脈が高頻度に現れ、連続的に数個の拍動が消失することもある。病的な不整脈でも軽度の症例では一般に治療の対象にな...
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強心配糖体(cardiac glycosides) ~ 強心作用のある薬物の総称

強心配糖体とはステロイドをゲニンとする配糖体で、強心作用のある薬物の総称です。強心配糖体を含む植物は多いが、ジギタリス(Digitalis sp)やストロファンツス類が代表的です。化学ジギタリスはDigitalis purpurea(ジギタ...
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血管拡張薬と心不全治療 ~ 末梢血管を拡張させ、循環抵抗を低下させる薬物は医学領域で汎用されている

血管拡張薬末梢血管を拡張させ、循環抵抗を低下させる薬物は医学領域で汎用されている。使用目的として…①冠血管の拡張による狭心症の予防・治療②高血圧症における降圧剤③末梢循環抵抗の低下による心不全の症状改善が挙げられる。獣医領域では主として小動...
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亜硝酸・硝酸(nitrites and nitrates) ~ 亜硝酸は血液中のヘモグロビンを酸化してメトヘモグロビンにするので、血液の酸素運搬能が障害される

亜硝酸は血液中のヘモグロビンを酸化してメトヘモグロビンにするので、血液の酸素運搬能が障害される。生成されたメトヘモグロビンの血中存続時間は主として赤血球中のメトヘモグロビン還元酵素の活性によって決まる。血中のメトヘモグロビンが総Hbの30%...
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青酸(hydrocyanic acid) ~ 家畜では青酸配糖体などを含有する植物の摂取によって中毒する

ヒトでは青酸カリ中毒が多いが、経口的に摂取された青酸塩は胃で青酸ガス(CN)₂になって吸収される。家畜では青酸配糖体などを含有する植物の摂取によって中毒する。青酸配糖体含有植物を摂取すると、咀嚼と嚥下の過程で同一植物内の分解酵素によって分解...
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クロモグリク酸(disodium cromoglycate, クロモリン cromolyn) ~ 副腎皮質ホルモン ~ β作動薬

クロモグリク酸(disodium cromoglycate, クロモリン cromolyn)肺の肥満細胞にIgEが結合して生理活性物質を放出させる過程を抑制する薬物。クロモグリク酸はヒトの呼吸器喘息に対して予防効果を示す。恐らく、喘息では肥...
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一酸化炭素(carbon monoxide) ~ 家畜では密閉畜舎内での事故例が時にある

一酸化炭素は吸入されると容易に血中に入り、ヘモグロビン(Hb)と結合してカルボキシヘモグロビン(HbCO)を形成する。その結果、酸素の結合できるHb量が減少して組織への酸素運搬が障害される。HbとCOとの結合力は強く、Hbと酸素との結合力の...