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去勢(castration)


去勢



雄、雌畜の生殖能力を廃絶させることを広く去勢といい、多くは、雄畜の精巣(睾丸)または、雌畜の卵巣を摘除するか、精系、輸卵管、子宮などを閉塞ないし摘除することをいう。


しかし、通常雄畜の性腺、とくに精巣除去ablatio testis, orchidectomyをいうことが多い。卵巣を摘除することを卵巣摘出術ovariectomyあるいは不妊手術sterilizationなどと呼んで区別する場合もあります。


去勢の目的も動物種によってさまざまですが、①経済利用上の都合で、たとえば動物の使役、飼養管理の容易化、雌雄の混合飼育可能、雑交尾を防止し、品質または肉質の改良に資するなどのため、②疾病治療の手段として、たとえば雌畜では思牡狂、雄畜では陰嚢水腫、陰睾、精巣腫瘍、精系の腫瘍、外傷および瘻管、慢性の睾丸炎などの治療法として行われます。


以下、各動物種の特性についてみると、馬の場合、古来最大の使役対象動物として、去勢は有効に利用されてきました。生後数か月から数年に至るまで、おのおのの個体の精巣の十分な発育と陰嚢内下降の程度にしたがって、適当な時期に去勢手術を行うことが多い。


手術術式を用役、種類、個体の状況、環境あるいは術者の巧拙により、種々の変法がみられる。すなわち、保定も起立枠場保定、無保定、横臥保定を選び、麻酔も状況により、局麻のみのものから全身麻酔のものまでいろいろとあります。


時に数か月の幼駒に去勢を実施して特殊な体型を期待するものもあり、放牧の牧場の広さにより3~4歳頃の去勢を推奨するものもありますが、多くは1~1¹/₂年頃に去勢する。


牛の場合は肥育および肉質の改善、労働使役の容易さの目的から行われ、まれに疾病治療のために去勢されることもあります。地域によっては、6ヶ月前後に去勢を実施することが多く、その大部分はBurdizzo無血去勢鉗子により非観血的に行われている。


時には1¹/₂~2年の時期に行うのが良いとし、早期に去勢すると骨格、内臓の発育が十分でなく、性腺、内分泌腺の発育も十分でないとして、尿石症その他の発生に関連があるという人もある。


解剖的に精系が馬に比して疎鬆で固有鞘膜が厚く、弾力性に富むので、成長した牛では通常観血的精巣切除後、結紮式で行うことが多い。


豚の場合、肉質改善とともに肥育効果を高めるために行うもので、実施の頻度はきわめて多い。去勢実施の時期としては、生後3週目頃から早めに行う。


この時期は保定も容易で、手術も楽で予後もきわめてよい。


反対に老豚の去勢は出血が多く、結紮、術後管理も十分に注意して行わないと合併症による死亡事故が少なくないとされる。なお、また一般に性成熟すると肉の臭気が強くなり、少なくとも去勢後6~8週後でなければその臭気は消えないといわれる。


去勢の影響がなくなり、肥育の日数ができるだけ長くなるように考慮することが必要です。特に離乳期にかからぬよう注意が肝要。


去勢実施に際して、国によっては5ヶ月以上のものの去勢には、局麻の使用を義務づけている所もあり、子豚の去勢は麻酔を必要としないが、アザペロンなどの鎮静を行えばいっそう容易に確実な去勢が期待できる。(一般に子豚の去勢は管理経験の深い人なら自分で行う人もある位です)。


犬、猫の場合、去勢はほとんど精巣包皮の外傷、精巣の腫瘍、その他疾病の治療の場合にかぎられる。また雑犬繁殖予防の見地から行われます。


雄猫の場合、肛門腺の臭気を減退させる効果があるとされます。


特殊な場合として、番犬の放浪性を防ぐため、盲導犬、猟犬などのその能力を高めるため去勢を行った方が良いとするものもあります。


術式としては、犬の場合、観血的に陰嚢前部の皮膚を正中切開し、両方の精巣を同一手術創から取り出し、皮膚を縫合する方法が一般的です。


緬羊、山羊の場合、いずれも生後6~8週頃に行うが、壮齢の去勢ももちろんありえます。毛質、肉質の改善時に疾病治療の目的で行われる。


幼齢のものは、陰嚢底部の切開による去勢が行われ、壮齢では多数のものにたとえばBurdizzo鉗子による無血去勢などがおこなわれるとされる。

キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)