Ca, P, Mg代謝異常に用いる薬物


カルシウム化合物(薬理作用)


注射と経口投与

細胞外液中のCa濃度の恒常性は高く、20%を越すような変動は体内器官の機能に重大な影響を及ぼします。従って体外から投与されたCaの作用は、経口投与であるか注射であるかによって異なってくる。

経口投与されたCaに対しては体内維持機構が働くので不足分だけが吸収される。しかし注射されたCaには体内維持機構の作動が間に合わず、投与直後に強い作用が現れる。

局所刺激作用

塩化カルシウムには強い局所刺激作用があるので、静脈内投与しかできない。

有機酸Ca塩は刺激作用が弱いので静注と筋注で用いることができるが皮下注は無理です。

循環系

Ca²⁺は心に対して強い興奮作用を示す。

神経・骨格筋

Ca塩の注射投与によって運動神経や筋の刺激域値が高くなり、刺激感受性が低くなる。臨床的にも高カルシウム血症では筋力低下から昏睡に至る抑制的な症状が認められるし、低カルシウム血症では神経・筋の刺激感受性の上昇とか強直性痙攣のような興奮性症状が認められる。

その他の作用

Ca²⁺は血液凝固に必要ですが、体外からの投与によって血液の凝固性が変わることはない。

塩化カルシウムには酸形成、利尿作用があるが塩化アンモニウムより弱い。


医薬品として用いる化合物


塩化カルシウム

静注用製剤で、緊急用とか輸液中配合以外には用いない。

グルコン酸カルシウム(calcium gluconate)

静注、筋注で用いることができるが、水溶性が低いので多くの場合ホウ酸を加えて水溶性を高め、Ca濃度を2%前後にした製剤が用いられる。両者は水溶液中で反応してボログルコン酸カルシウム(Ca-borogluconate)になる。

経口用製剤

乳酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、グリセロ燐酸カルシウムなどがある。

後二者はPの補給をも効能にしている。


パラチロイド(parathyroid)



牛の上皮小体から抽出したホルモン剤です。


低カルシウム血症の個体にCa剤、パラチロイド、VD剤を投与した時の血中Ca濃度の時間経過を示した場合、この曲線からはパラチロイドを一日一回ずつ投与すると良いように思われるが、実際には①効果が必ずしも確実でなく、②反復投与によってアンチホルモンが形成され、③高価であるなどの欠点がある。


従ってテタニーを伴う急性上皮小体機能不全の緊急治療にだけ用いる。

ビタミンD



VDとしてはエルゴステロールやVD₂の経口剤が多数販売されていますが、多くはVAやVEとの配合剤であり、欠乏症の予防薬として用いる。


VD剤の欠点は体内での作用がPTH依存性である点です。そこでVDの誘導体で①その作用発現に体内のPTHが必要でない薬物とか、②体内での作用がPTHと類似する薬物なども開発されている。

エルゴカルシフェノール(ergocalciferol)

VD₂でクル病や骨軟症の治療に注射や経口で用いる。

ジヒドロタキステロール(dihydrotachysterol)

エルゴステロールに紫外線を照射し、さらに水素添加した誘導体。

体内での作用は上皮小体ホルモン様です。経口投与で用いる。


VD中毒



VDは必要量の5倍以上の投与によって中毒する可能性があります。乳牛の乳熱に対する過量注射や犬猫に於ける経口剤の過量投与による中毒が時に発生する。


米国ではVD₃が殺鼠剤に用いられており、このために猫のVD中毒が散発している。


瀕死の鼠を猫が捕食するためです。

マグネシウム化合物



Mgの経口吸収率は低いので、Mgは経口で与えるか注射で与えるかによって作用が異なる。

硫酸マグネシウム

注射で用いる薬物ですが、心と中枢神経(末梢神経も)系に抑制作用を示す。

経口投与では瀉下作用が強い。

マグネシア(magnesia)

酸化マグネシウムで経口的に与えると胃内で可溶性の塩化マグネシウムに変る。

Mg補給用として飼料添加剤型で用いられる。

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