エヤーシャー(Ayrshire)

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エヤーシャー(Ayrshire)
エヤーシャー(Ayrshire)



イギリスのスコットランド西南のエヤーシャー州原産の乳用種。品種としては比較的新しいものと言われていますが、その成立の経過は判然としていません。


エヤーシャー州在来の牛に、オランダ牛、英仏海峡群島からの牛、ショートホーンが交雑されてできたと推定されています。1750年ころから改良が進められ、最初はダンロップ、次にカンニンガムといわれたことがあります。


1803年以降、エヤーシャーという品種名ができました。


原産地のスコットランドは丘陵が多いが、1850年ごろからまず道路の改修が着手され輸送力がのび、その影響で酪農がさかんになり、本種の泌乳能力の改良も進みました。


このように道路の建設はその地方の酪農発達と大いに関係があります。これは酪農の生産物が牛乳というむしろ特殊な食品であるからです。


なおスコットランドは気候は必ずしも良くなくて、気温は低く、湿度が高い。また、低地には沼沢、泥炭地が多くて、地味は豊かではありません。


したがって少なくとも、この品種成立の初期には、そこの草生は豊かなものではありませんでした。そのような環境で作出されたものだけに、エヤーシャーは粗放な管理に耐え、我慢強く、また、草をあさり歩くたくましい性質がつちかわれたといわれています。


この性質は、現在でもこの品種の美点でもあります。


1877年にイギリスにエヤーシャーの登録協会が発足しましたが、この協会は乳用能力検定事業を早くからとり入れ、また種雄牛の後代検定を行い、科学的にその改良を推進して、現在のエヤーシャーを築きあげました。

エヤーシャーの詳細



毛色は白い地に赤色の斑紋のあるものが多い。


この赤色は淡赤色から褐色、または黒赤色にいたる種々です。その斑紋のでかたがブラッシュで、はいたような形にでるものが多い。また、赤色の斑紋の現れる部位は一定していません。


体格は乳用種としては中等のもので、成牛の体高、雌約126cm、雄約138cm、成体重は雌400~450kg、雄700~800kgです。


顔は比較的細長く、あごの発達のよいのが目立ちます。


角の形状が独特で、長く前上方に特有の屈曲を示していて、いかにも優美な形です。肩幅、背幅が割合に広く背線はまっすぐで、体がしっかりとしています。


腰部は水平で肉付きが良く、ショートホーンが改良の過程に入ったせいか、少し肉用的なところが、このあたりにみられます。しかし、乳房は均称よく発達しその形状もよく、丸みを帯びた長方形です。また、質もよろしい。


乳房は本種の改良でとくに力をいれたところです。しかし、乳頭が短小のものが多いのは欠点とされています。

能力



乳量は普通年間、3,500~4,500kgです。


牛乳の組成は、乳脂率4.0%、蛋白質3.35%、全固形分12.72%です。脂肪球は小さくその直径は平均2.5μです。したがって、飲用乳、チーズ原料乳としても好適です。


また、エヤーシャーの牛乳のカードは、他品種のものよりやわらかく、乳幼児用、病人用の牛乳として良いと言われています。


前述のごとく、エヤーシャーは改良過程においてショートホーンの血液を入れたせいか、泌乳後の雌牛でも肥育性にとみ、その肉質は良い。


去勢牛や雌の不妊牛を肥育すると脂肪交雑もかなりよく、乳用牛のうちでもっともよい屠体を生産します。体脂肪はいくらか黄色ですが、その程度は著しくはない。


本邦にように肉質のやかましいところで、乳と肉とを目的とするような牛としては、エヤーシャーは一考に値するという考えもあります。


性質は非常に活発ですが、神経質なところもあります。


管理が悪いと性質が悪くなります。とくに種雄牛によくみられます。採草能力が大で、とくに良好な草生でないところでも十分に草を探し求めて食べます。


体質強健、環境適応性が大で、粗放な管理でもよく能力を維持します。ホルスタインよりもいくぶん早熟で、17~19か月で種付けし、26~28か月で初産分娩をします。


妊娠期間は、雌胎児の場合283.14±0.38日、雄胎児の場合、286.83±0.83日です。


他品種より長命といわれ、18~20才でまだ生産をしているものも多い。ジャージーやガーンジーのように近親繁殖と集約な飼養管理で、改良を進めてきたものではありません。


したがって、繁殖力は旺盛です。子牛の生時体重は32~36kgで、特に活力にとむ。

分布



粗放な管理下でも良く能力を発揮するので、開拓地のようなところに分布します。


カナダはその好例で開拓地で評判が良い。イギリス、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドなど北欧に多く、アメリカの北東部やカナダに分布しています。


また、オーストラリアやニュージーランドにもかなりいます。


本邦でも明治11年(1878)開拓使により北海道に輸入され、その後もアメリカから輸入されて、北海道酪農の先鞭をつけました。北海道農業が集約化されるにつれ、ホルスタインに置き換えられましたが、それでも根釧地方には多く存在していました。


ただし、現在は純粋種はほとんどあとを絶ってしまいました。


内地でも山口県には一時、エヤーシャーを導入したことがあります。

キジと水鳥 仲田幸男
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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