砒酸 Arsenic acid H₃AsO₄
亜砒酸に濃硝酸を作用せしめ90℃内外に加温すれば五酸化砒素となりさらに水と結合して砒酸溶液となります。
これを濃縮して結晶を生ぜしめ加熱して五酸化砒素As₂O₅を作る。
As₂O₃+2HNO₃=As₂O₅+NO₂+NO+H₂O
As₂O₅+3H₂O=2H₃AsO₄
砒酸は砒酸鉛および砒酸カルシウムの原料として重要で最も経済的に生産されます。
五酸化砒素は白色粉末で冷水には徐々に、温水には速やかに溶解して砒酸を生成します。またアルカリによく溶けて砒酸塩を生じ、他方濃塩酸にも溶けて五塩化砒素を生成します。
すなわち亜砒酸と同様両性です。
砒酸も五酸化砒素As₂O₅の水の含量によって正(オーソ)砒酸1/2(As₂O₅・3H₂O)、焦性(パイロ)砒酸As₂O₅・2H₂O、異性(メタ)砒酸1/2(As₂O₅・H₂O)の他3As₂O₅・5H₂O、As₂O₅・7H₂O等がありますが、農薬としての砒酸塩類は大部分正砒酸の塩類です。
すなわち正砒酸の水酸基を種々の金属によって置換すれば種々の塩類が生成します。
例えばナトリウムと正砒酸により砒酸一ナトリウム(NaH₂AsO₄)、砒酸二ナトリウム(NaHAsO₄)、砒酸三ナトリウム(Na₃AsO₄)等があり、第三塩はアルカリ塩の場合は水に可溶性で金属塩は水に難溶です。
一般に水に難溶の砒酸塩は第一塩が最も水に溶け易く、次で第二、第三塩です。また酸、アルカリに対する反応も第二第三塩によって異り、後述の通り砒酸鉛では酸性のもの、砒酸カルシウムは第三塩の砒酸三カルシウムを用うる。
砒酸ナトリウム竝にカリ塩は水に可溶性で、植物に対する薬害が猛毒で利用し難いですが、除草剤あるいは毒餌として用いられます。
市販の砒酸ナトリウムは多く砒酸二ナトリウムでAs₂O₅60~62%および亜砒酸の痕跡を含有します。