砒素・牛
(a)
牝牛4頭が砒素入駆鼠薬を食べ発病、食欲欠損、泌乳停止、烈しい下痢を伴い1頭は1日を経て斃れ、剖見は潰瘍性腸炎を呈し、胃の左側に大穿孔を生じ、胃内容物はこれより腹腔に漏出した。
第2は速かに回復し第3は10~14日間を経、第4は慢性に経過し、凡そ10週の後、剣状突起部に胃瘻管を生じました。
(b)
牝牛が砒石舐剤を舐めた後1、2時間で発症、食欲を失い、疝痛、出血性下痢を来し、45時間で斃死した。
(c)
多数の牝牛は古い緑色(亜砒酸色素)の毛氈を食い1頭は夕刻、2頭は夜中、3頭は翌日斃死しました。
その症状は眩暈、食欲欠損、流涎、疝痛、尿の淋瀝、下痢、裏急後重等でした。
(d)
2砒素鉛を撒いた畑の周囲の雑草を和牛に与え、凡そ10時間で、重症大量の血便、反芻絶止、腸出血を伴う中毒を起し治療によって治癒しました。
(e)
牛も亦馬のように少量を永く内用すると習慣性となり砒石0.06~0.36gを漸次増量して長時日与えると障害を来すことなく、甚だ肥満したという報告があります。
また牛に毎日0.2g宛10日間与えると始めは栄養が衰えたが、後には体重を増加し容貌改善し、同様の実験を緬羊、豚に1日0.05g、鳩に2~4mgを与えて試験した結果体重1kgにつき牛は0.15mg、緬羊は1mg、豚は0.4mg、鳩は1mgの粉末砒石を用うるに適するという。