抗真菌薬(antifungal drugs) ~ 家畜の真菌症


●皮膚真菌症

家畜の真菌症では牛の皮膚糸状菌症が多い。主として放牧中の育成子牛に発生し、輪癬(ring worm)と呼ばれています。疾病としては軽度ですが、醜悪な外観からくる不快感の故に嫌われている。


皮膚糸状菌症は馬や犬猫にも時に発生しますが、その他の家畜では稀です。


●カンジダ・全身性真菌症

家畜のカンジダ症とか、アスペルギルスやヒストプラズマによる全身感染症は比較的少ない。しかし、真菌性乳房炎の発生は増加傾向にある。


欧米では七面鳥のカンジダ症が地域的に流行するので、ナイスタチンを飼料添加剤として用いている国もあります。


その他の菌属による家畜の真菌症は稀です。


真菌症の化学療法



白癬菌や小胞菌による皮膚糸状菌症は局所投与剤でも治療できるが、難治性では全身性投与薬も用いられる。


その他の真菌症では全身性投与薬を用いるが、抗真菌薬の抗菌域には特色があるので菌種の同定が治療用薬物選択の基本条件になります。

アゾール系抗真菌薬(azole antifungal agents)



イミダゾールやトリアゾールの誘導体の抗真菌薬は名称の語尾からアゾール系と総称されます。in vitroでは真菌に対して広範囲の菌種に成長阻害作用を示しますが、in vivoでの有効性とは必ずしも平行しない。


作用機序としてステロール14-α-脱メチル酵素の阻害が主張されている。この阻害によって細胞壁のエルゴステロールが合成されず、また細胞内に蓄積するメチルステロールが細胞膜の透過性を傷害すると説明されている。

●ケトコナゾール(ketoconazole)

スペクトルの広いアゾール化合物で経口投与で用いる。


●ミコナゾール(miconazole)

ケトコナゾールに類似し、注射剤や局所用剤として用いる。


グリセオフルビン(griseofulvin)



グリセオフルビンは表皮最内層の基底膜細胞に特異的に取込まれ、白癬菌や小胞菌の成長を抑制する。表皮基底膜に分布させるためには全身性投与が必要ですが、注射剤の開発が困難です。したがって、専ら経口投与で用いられる。

●体内動態

経口投与すると肝で強い初回通過効果を受けて分解されます。それ故、きわめて微細な粉末(マイクロクリスタル)で製剤を作り、消化管での溶解吸収を速めている。


この製剤だと吸収が速いので、肝での分解を避けられる部分が多くなり、利用率が高まる。


全身循環に出たあとは新生表皮細胞に特異的に蓄積する。


●臨床応用

牛を含めてすべての動物に経口投与で用いることができる。1回の投与によって一層の新生表皮細胞だけに蓄積するし、表皮層は1日に1回分裂する20層以上の細胞層であるから、表皮層のすべての細胞層に薬物を行き渡らせるには20~30日間の連続投与が必要です。


グリセオフルビンは局所適用も可能ですが、経口投与より有効性が低い。


ポリエン系抗生物質


作用機序



真菌の細胞膜にポリエンが作用すると直径8Åの水性の穴ができる。この小穴を通じて細胞内物質の遊出と細胞外物質の流入が起こり、真菌は死滅すると考えられています。


真菌の細胞膜のエルゴステロールは特異なステロールであり、このステロールとポリエンが結合し、膜の構成分子の方向性を変化させて穴をあけると説明されている。


真菌以外の細胞膜には作用しない。

●ナイスタチン(nystatin)

カンジダに有効な薬物で、局所適用で用いる。毒性が強いので全身性には適用しない。


非吸収性であるから消化管カンジダ症には経口投与で用います。


●アンホテリシンB(amphotericin B)

ヒストプラズマ症などの全身性真菌症に有効です。


毒性の強い薬物ですが、吸収性が悪いので専ら静脈内に投与します。犬のヒストプラズマ症の治療では7日以上の投与が必要ですが、安全係数の低い薬物であるから毒性をモニター(BUNの測定)しながら投与する。


皮膚糸状菌症の局所適用薬



犬猫の皮膚や粘膜の真菌症の治療には人体用医薬品が流用されている。アゾール系のクロトリマゾール(clotrimazole)のほか、ハロプロジン(haloprogin)などが用いられる。

●牛の輪癬の局所治療薬

ナナフロシン(nanafrocin)の油剤が汎用されている。その他に抗生物質のシッカニン(siccanin)やヨウ素系消毒薬のポピドンヨードなども用いられる。
キジと水鳥 仲田幸男 昭和46年12月20日 ASIN: B000JA2ICE 泰文館 (1971)
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