動脈瘤(aneurysm)
動脈瘤には外傷性動脈瘤traumatic aneurysmと病的動脈瘤pathologic aneurysmの二つがあります。
外傷性動脈瘤:創傷や動脈内注射時における血管損傷の継発症です。損傷部に拍動性血腫が生じ、その周囲の組織が線維化して被膜を形成し、一方血腫は皮殻状の血栓をつくって壁を強化し、動脈瘤が形成されます。
治療法としては、側副血行が完成されてから、動脈瘤を注意深く切開して血栓を除去し、動脈との交通部を縫合閉鎖する。この方法が困難なときは動脈瘤を摘出したのち、流出入動脈の端端吻合を行うことがあります。
病的動脈瘤:家畜においてはStrongylus vulgarisの幼虫の寄生に起因した馬の前腸間膜動脈瘤がある。寄生部位の動脈はまず内膜炎をおこし、その粗糙部に血栓を生ずる。
一方動脈壁は肥厚して内腔が狭小かつ脆弱となるが、周囲組織が線維化してこれを補強し、その結果多くの場合、局部は紡錘形に膨隆する(直腸検査で確認可能)。
動脈瘤はそのまま放置されると瘤嚢は次第に拡張して周囲の組織を侵し、ついに破裂して腹腔内大出血により死を招くことがあります。すなわち、馬の前腸間膜動脈瘤では腹腔内出血をみ、また犬の糸状虫寄生にもとづく肺動脈瘤では喀血して危険状態に陥ることがありますが、なかには開胸手術による病的肺の摘出によって救われるものがあります。
動脈撮影(arteriography)
近年、血管外科の発展にともない、この種の血行障害の検査はきわめて重視され、獣医臨床でもさかんに用いられるようになりました。
動脈撮影は、動脈内腔へ直接注射針を刺入して、血管造影剤を注入する方法とカテーテルを用いる方法があります。一般に頸動脈や腹大動脈が多く用いられ、とくに四肢末端の場合は、正中動脈や腹大動脈から注入し、その直後ないしは、数秒後に撮影して良好な血流像をうることができる。