アミノ配糖体抗生物質(aminoglycoside antibiotics) ~ グラム陰性菌感染症の治療に用いますが、重症の急性感染症に最も威力を発揮する



この系の抗生物質は数個のアミノ糖が配糖体結合した基本化学構造を持ち、水溶性が高い。主としてグラム陰性菌感染症の治療に用います。

抗菌作用



抗菌域は広く、大腸菌、Pasteurella、Hemophilus、Klebsiella属などのグラム陰性菌と抗酸菌に対する抗菌力が強い。グラム陽性菌では無効な菌種が散在する。


殺菌作用が強く、MICと殆ど同じ濃度のMBCが測定されることが多い。酸性では抗菌力が著しく落ちるので、犬猫の尿路の感染に用いる時にはアルカリ化薬との併用が推奨されます。

抗菌作用機序



菌が薬物に暴露されてから死滅するまでの時間は短いのが特色で、暴露された細菌は次の分裂の時に死滅すると考えられています。


高度にイオン化した物質であるから一般には細胞膜を通過できませんが、細菌の細胞膜にはアミノ配糖体を吸収する能動輸送系が知られており、この輸送系によって原形質内に取り込まれる。


原形質に取込まれたアミノ配糖体はリボソームの30Sに結合してコードを誤読させ、異種蛋白を合成させる。このために新しい細胞膜が不完全になり、原形質内物質の流出と外界物質の流入を促進し、菌は次の分裂の時に死滅すると説明している。

体内動態



経口投与しても殆ど吸収されず、吸収率は2~5%ですが、この率は動物種によって異なる。消化管内では分解されないのでそのまま糞中へ出る。


アミノ配糖体の腸管吸収は腸管が炎症などの病的状態では促進されることがあります。筋注では速やかに吸収され、脳脊髄以外の全身に分布します。


細胞内には殆ど分布しないので、分布容は小さく、0.2 l/kg程度になる。


馬や牛では筋注後1時間で血中濃度が最高になり消失期になるが、t½は2時間弱です。消失は主として腎から尿中への排泄によるので腎障害があると消失が遅くなる。


また薬用量を投与して体内の薬物が消失した後にも、腎には2週間に以上にわたって有意な濃度が残留する。


アミノ配糖体では、血中の薬物の小部分が腎など一部の組織の細胞に入りこむ。入り込む量には濃度依存性に乏しく、高用量でも入る量は少ないが、反復するたびに同じ量が入り込んで蓄積する。


細胞内に入ったアミノ配糖体は容易には消失しない。


この現象は生体内に於ける抗菌活性には関連しないが、毒性や残留性と関連する。また頻回の投与や長期投与を避ける論拠となっている。

投与計画と有効性



アミノ配糖体は濃度が高いほど殺菌率が高くなる。また多くの菌種の感染でPAEが確認されています。したがって投与後の最高濃度を高くするほど有効性が高くなるので、1日量を1回で投与する計画がよい。


反復投与すると毒性が強くなるので投与は数日間に限定する。


β-ラクタムは1日量を頻回に分けて投与するほど有効性が高い。したがってアミノ配糖体と併用する場合には別々に投与する方が合理的であり、配合剤として投与するのは適切でない。

耐性と毒性



アミノ配糖体では耐性菌発現が速い。これは薬物分子中の多くの部位が不活性化を受ける可能性があるからだと説明されている。


また菌種によっては薬物依存性株が発現することがある。


アミノ配糖体は抗生物質のうちでは毒性の強い群に入る。重大な毒性としては内耳と腎の障害が挙げられる。これらの毒性は高薬用量を1週間以上連続投与すると発現し、内耳では蝸牛と前庭との感覚細胞が変性するために、平衡感覚や聴覚が障害されることがある。


この毒性は大動物では稀ですが、犬猫、特に猫は敏感で薬用量の連続投与によって重症の運動障害が現れる。


腎ではアミノ配糖体が近位尿細管細胞の刷子縁に結合して細胞を変性させて障害を起こす。

臨床応用



アミノ配糖体はグラム陰性菌感染症の治療に用いますが、重症の急性感染症に最も威力を発揮します。アミノ配糖体は最も急速に働く殺菌性抗菌薬で、活発に分裂する感受性菌との1時間の接触によって生菌数を1/1,000に減少させる。


アミノ配糖体のもう一つの特色は他の殆どの抗菌性薬と協力する点であり、併用に適している。貧弱な組織移行性と強い毒性の割には使用頻度が高いのはこれらの性格による。

個々の薬物


●ストレプトマイシン(streptomycin, SM)、ジヒドロストレプトマイシン(dihydrostreptomycin, DSM)


SMは最初に発見されたアミノ配糖体であり、科学的に還元してDSMをつくる。DSMは動物専用の抗生物質


●カナマイシン(kanamycin)、ゲンタマイシン(gentamicin)、アミカシン(amikacin)


これらの薬物では、後に挙げたほど抗菌域が広く、抗菌力が強く、高価です。アミカシンは耐性発現頻度が低い。犬猫の感染症では注射で用いられますが、産業動物では飼料・飲水添加で用いる。


●フラジオマイシン(fradiomycin, ネオマイシン neomycin INN)


カナマイシンと同程度の抗菌力を持つが、毒性が強く、飼料添加剤や外用にだけ用いられる。注射は危険です。


●アプラマイシン


腎への毒性や残留性が低いアミノ配糖体
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