剖検
甚急性の経過をとつたものでは、消化器系を初め心、腎、肝、脾などには特別の変化を認めませんが、血液の凝固不全と汚紫色があり、また脳の充血、血管の怒張は極めて著明です。
血液検査
中毒の甚だしいものは一般に白・赤血球の増加を来し、白血球では好酸性、大単核、淋巴(大)の増加を見ます。
(2)鶏では甚急性の場合、接種後数十分で発症斃死し、急性では3~5日後に死の転帰をとる。
主徴は羽毛の逆立、鶏冠の暗紫色、呼吸の促拍、間歇性全身痙攣などがあり、剖検では著しい変化を示さぬことなどは山羊中毒に酷似しています。
しかしここで注意を要することは下記表の通り、中毒症状の出現や軽重に必ずしも比例しないことで、No6は軽症であつたに拘わらず5日目に、またNo2は殆ど外見上の症状を認められなかったものが15日目に突然斃死しています。
これは一面個体差にもよりますが、前述の如くエンドリンの残効性が強く、体内では殆んど分解せず永く蓄積されて後、致命的な障害を及ぼすものではないかと思われます。
この点に関し成山羊を用い日量体重kg当り0.001cc宛約60日間の経口投与を行いましたが、5ヶ月以内では障害を見ませんでした。
然しエンドリンのような残効性の強い毒物の慢性中毒は学問的にも実際問題としても意義の深いことです。
療法
本剤は極めて安定性が強く、アルカリ、酸などにも分解されないので、その原因療法は、適確なものがありません。
唯、酸化剤に分解されることから中毒後一般酸化剤たとえば過マンガン酸カリ液、過酸化水素などの経口投与あるいはチオ硫酸ナトリウム液、BALの経口乃至注射および高張ブドウ糖液の静注を試みることは意味があります。
他は全く対症療法で吐剤の応用、食塩水による反覆胃洗浄、鎮痙剤や呼吸中枢刺戟剤の注射を行いますが、モルフイン系の鎮静剤は呼吸麻痺を強めるので禁忌です。