ヌカカはきわめて微小な昆虫で、蚊帳の目も通過してしまうほど小さなものが多い。口器は刺咬性で大部分は昆虫の体液を吸いますが、Culicoidesなどは温血動物に対して吸血性をしめします。
これらのなかには人や家畜の血液を吸うものがあります。
本邦でもっとも問題となっているのはニワトリヌカカです。このヌカカは鶏のロイコチトゾーン病の中間宿主になっているので、ニワトリヌカカ防除対策は養鶏家の緊急課題です。
おもな種類と分類上の位置
双翅目:Diptera
長角亜目:Nematocera
ヌカカ科:Ceratopogonidae
Leptoconops
L.nipponensis
Culicoides
ニワトリヌカカ:C.arakawae
イソヌカカ:C.cirumscriptus
ヌカカ:C.obsoletus
ウシヌカカ:C.schultzei
ウスシロフヌカカ:C.odibilis
ニッポンヌカカ:C.nippoensis
ミヤマヌカカ(シガヌカカ):C.maculatus
ヌカカの形態
体は非常に小さく、1~2mmの大きさで、黒色あるいは暗褐色をしています。脚は比較的短く、口器は吸血に適しています。
頭部は球形に近く、1対の複眼、1対の触角と口器があります。単眼はありません。触角は14節に分れ、第1節は丸くて大きく、他の節は数珠状または、長方形です。
雌の触角は短い毛が生えていますが、雄の触角には長毛を有し、蚊の雄の触角に似て羽毛状にみえます。
口器はよく発達して1対の大あご、1対の小あご、上唇、下唇、舌状体が束になっていて、頭とほとんど同長です。
大あごは鋸歯を有し、宿主の皮膚を切開するのに役立っています。蚊の口器と同様に宿主の皮下に口器をさし込んで吸血します。
胸部は丸味をおび、中胸はよく発達しています。
脚は蚊に比べると太くて短い。
多くの種類では翅は特徴をもち、短くて幅広く、暗褐色の地に明るい斑紋をもっていますが、無紋の種類もあります。
腹部はやや短く、先端に外部生殖器があります。雌の外部生殖器ははっきりしませんが、雄の外部生殖器はよくわかり、把握器clasperは1対あって、交尾中雌の腹部の先端をとらえる。
黒色で長楕円形で、長さは約0.4mm
小さな線虫状(あるいはうじ状)の形をしていて、4齢幼虫は5~6mmの長さです。
体は白色またはクリーム色ですが、頭は黄褐色あるいは暗褐色をしています。頭部には1対の眼点、1対の大あごおよび1対の触角があります。
また、3節の胸部と9節の腹部よりなります。
2~4mmの大きさで、こん棒状を呈し、頭胸部は大形で腹部は細長い。
蚊のように腹部は彎曲していない。
ヌカカの発育および習性
ヌカカは世界中に分布し、蚊やブユと同様に完全変態をします。
ヌカカの幼虫は1~4齢あります。また、吸血性のヌカカは雌だけが吸血します。ヌカカの習性として興味あることは静止時には2枚の翅を腹部背面で上下に重ね合わせることです。
吸血活動は日没30分ころから日出30分前に多く、種類により夜の前半および日出前に活動がはげしい二山性の吸血活動をするものがあります。
しかし、時には日中でも吸血するものもあります。宿主の裸出部はもちろん、衣服や髪の中、羽の中にまでもぐりこんで吸血します。
また、雄、雌とも明りに誘引されるので、夜間、ライトトラップを点灯しておくと数千~数万というヌカカを誘引捕虫することができます。
ヌカカの宿主嗜好性は多少異なり、鶏舎ではニワトリヌカカがもっとも多く全捕虫数の80~90%を占めています。次いでウスシロフヌカカです。
一方、牛舎、豚舎ではニワトリヌカカは少なく、ウシヌカカ、ミヤマヌカカ、ニッポンヌカカなどが多い。
雄は吸血しないので交尾後畜・鶏舎外にいることが多いですが、雌とともに畜舎内に侵入するものもあります。
吸血の終わったヌカカは畜舎内で休息し、いわゆる血液の濃縮をはかり、大部分は早朝に舎外に飛び立ちますが、日中でも畜舎内の羽目板のすきまなどに休んでいるものもあります。
舎外に出た雌ヌカカは木の葉や草のかげなどで休み、約3日経って卵巣が発達すると産卵をはじめます。産卵は夜間行われます。
1回の産卵数は種類によって違いますが、30~120個です。
多くの種類では淡水の湿地、とくに水田がおもな発生源であるといわれています。しかし、海岸の塩分を含む湿地から発生するイソヌカカ、ヤマトヌカカという種類もおります。
一般に産卵は湿った土の表面で行われます。卵は2、3日で孵化して幼虫になります。幼虫は自由生活をして土中や水中を活発に動きまわります。
幼虫の餌は微生物ですが、肉食性のため共喰いすることもあります。
ニワトリヌカカの幼虫は体を左右に振動させて、特有の遊泳運動をします。
幼虫期間は18~26日といわれていますが、この間脱皮しながら1~4齢となり、やがて蛹化します。蛹は水面に呼吸管を出して浮き、静止して餌はとらない。
蛹は2日ぐらいすると羽化します。
ニワトリヌカカの一世代は夏季では1ヶ月以内で、4~11月ころまで発生します。ヌカカの越冬は3齢、4齢虫でします。
●蚊
成虫:雌のみ吸血、吸血時間は夜間、昼間、朝、夕暮時
蛹:水面にいる。
幼虫:水中にいる。
●ブユ
成虫:雌のみ吸血、吸血時間は日中、早朝、夕暮時
蛹:水中の植物、岩、木片などに吸着
幼虫:蛹と同じ。
●ヌカカ
成虫:雌のみ吸血、吸血時間は夜間、静止時には2枚の翅を上下に重ねる。
蛹:水面にいる。
幼虫:湿地、水田などの湿った土の中や水中にいる。
ヌカカの害
ヌカカは蚊帳の目も通るような昆虫で、しかも夜間多数が飛来吸血にくるので、ブユと同様にannoyanceとirritationははなはだしい。
養鶏場で夜間ライトトラップを設置してヌカカを採集すると、最盛期では数万、十数万のヌカカを採集することができます。
鶏は安眠を妨げられ、育成率、産卵率は低下します。牛や豚でも同様にヌカカの襲撃にあってその生産性は低下します。
次にvectorとしての害は、人の糸状虫の中間宿主となっています。また、ニワトリヌカカが鶏のロイコチトゾーン病の中間宿主となっています。
さらに、鶏痘、牛の流行熱、牛の異常産、アフリカ馬疫、馬伝染性貧血、ブルータングのウイルスを伝播したり、オンコセルカの中間宿主といわれています。
ヌカカの防除
ヌカカの発生源は水田のような湿地、とくに幼虫はその土中にいるので、広大な発生源です。したがって、発生源対策は非常に困難です。
農作業との連繋において発生源対策を講じる必要があります。
まず畜舎や鶏舎内にヌカカを飛来させないことです。しかしメッシュの細かい網を畜・鶏舎内に張ることは通風換気の上から問題です。
ヌカカが忌避する忌避光線(黄色光の電球)を利用するという考え方があるが、あまり実用的ではありません。
成虫対策としてはライトトラップの設置と畜舎および畜鶏体に対し殺虫剤の散布です。
ヌカカに対する殺虫性ならびに家畜への安全性という点から2、3の殺虫剤が使用されていますが、残効性という点でいずれの薬剤もさらに改良されるべきでしょう。

