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吸虫駆虫薬(antitrematodal drugs) ~ 吸虫駆虫薬としては主として牛の肝蛭症に有効な薬剤が用いられている

吸虫駆虫薬(antitrematodal drugs) 駆虫薬

 
 

牛の肝蛭駆虫薬

 
 
本邦における家畜の吸虫症では牛の肝蛭症(かんてつしょう)だけが多発疾病です。したがって吸虫駆虫薬としては主として牛の肝蛭症に有効な薬剤が用いられています。
 
 
本邦の乳牛飼育では粗飼料に稲わらを用いているので、水田にヒメモノアラガイが増殖すると稲わらに付着して牛に採食されます。
 
 
稲わらに付着したカイは長く生存する訳ではないので、肝蛭感染が問題になるのは冬期です。
 
 
本邦に常在する肝蛭は、Fasciola hepaticaとF.giganticaとの中間型の種で、体内での幼虫期間は80~90日と報告されています。
 
 
肝蛭は幼虫期間を肝組織中で生育し、胆道へ出て成虫になります。肝蛭症における病害の大部分はこの幼虫による肝組織の穿孔で、一部は成虫の吸血による。
 
 

肝蛭駆虫薬の特色

 
 
肝蛭の駆虫薬には‥
 
 

①成虫だけに有効な薬物
 
②成虫と幼虫後期に有効な薬物
 
③幼虫だけに有効な薬物とがある。

 
 
③類の薬物は羊用であり、本邦では販売されていない。
 
 
経口投与剤が多く、注射剤は例外的です。
 
 

成虫駆除

 
 
成虫は胆道に寄生しますが、吸血するので血液中に高濃度分布する薬物が有効です。
 
 

幼虫駆除

 
 
現在用いられている肝蛭駆虫薬の多くは幼虫にも有効です。
 
 
一般には体内器官の形成が進んだ後期幼虫に有効です。
 
 

体内動態と有効性

 
 
現在用いられている肝蛭駆虫薬は血清蛋白との結合率が高く、血中濃度が長時間にわたって高濃度が保たれており、これによって成虫への有効性が確保されている。
 
 
しかし幼虫が次々に成長してくるので1~2ヶ月後の再投薬が必要です。幼虫への有効性が高いほど長期にわたる有効性が発揮できる。
 
 

乳中残留

 
 
本邦の牛の肝蛭症は乳牛に多いことが特色です。搾乳中の乳牛に投薬された抗肝蛭薬は乳汁中に少量ずつ移行します。
 
 
この移行濃度が公衆衛生上許容できる濃度を超えていれば、無残留とみなされるまでの期間に生産された牛乳は飲用に不適当です。
 
 
この期間は、薬物によって異なり、3~4日から30日以上にまでの幅があります。
 
 

抗肝蛭薬の使用法

 
 
以上のような背景から次のような使用法が選択されています。
 
 

①搾乳中の乳牛には牛乳残留時間の短い薬物を用いる。

②残留期間の多少長い薬物は乾乳期に投与する。

③残留期間の長い薬物は育成牛や肉牛に用いる。

 
 

トリクラベンダゾール(triclabendazole)

 
 
ベンツイミダゾール系薬物で、肝蛭の成虫と後期幼虫を駆除できる。線虫には無効です。
 
 
この薬物は肝蛭から抽出したチューブリンと結合しますが線虫のチューブリンとは結合しないと報告されている。牛と羊に経口投与で用いる。
 
 

クロルスロン(clorsulon)

 
 
スルフォナミド誘導体で、4mgの経口または注射投与によって肝蛭成虫を完全に駆除できる。幼虫の駆除にはこの4倍量の投与が必要です。
 
 
作用機序として解糖系酵素の阻害が主張されています。
 
 

ニトロキシニル(nitroxynil)

 
 
皮下または筋肉内注射で用いられる肝蛭駆虫薬です。成虫と後半期幼虫に強い殺滅効果を示します。
 
 
注射後の吸収は速やかですが、蛋白結合率がきわめて高いので消失が非線形で、薬用量投与後1ヶ月近くにわたって高い血中濃度が維持されます。
 
 
その後の消失は速やかで、半減期が1日程度です。
 
 
この薬物は有効性の高い薬物ですが、残留性も高い。
 
 

ビチオノール(bithionol)

 
 
クロルフェノール系の皮膚消毒薬で、スペクトルの広い駆虫薬でもあるが、毒性が強い。各種家畜の条虫類、吸虫類に有効です。
 
 
牛の肝蛭成虫に対して90%近い駆虫率を示しますが、幼虫には無効です。経口投与で用いられますが、吸収性はあまり良くない。
 
 
有効性の点でも安全性の点でも新しい薬物に劣るために使用頻度は低下しています。馬の葉状条虫に対しては比較的低用量で有効であり、それだけ安全性が高くなるので用いられる。
 
 

ジアムフェネチド(diamfenethide)

 
 
羊の肝蛭駆除薬として開発された薬物で、強力な幼虫殺滅効果を発揮します。羊に経口投与すると速やかに吸収され、全身に分布しますが、特に肝への分布濃度が高い。
 
 
羊の肝では2段階の代謝をうけ、D→М₁→М₂と変化する。М₁は生物活性が強く、近傍に存在する幼虫を殺滅します。薬物が肝から血中に放出される段階では生物活性の低いМ₂になっている。
 
 
この薬物の体内消失は速やかですが、肝に生存する幼虫、特に発育前半期の幼虫を殺滅します。成虫に対する効果は低い。
 
 

その他の肝蛭駆虫薬

 
 
牛の肝蛭の駆虫に経口投与で用いられる薬物にオキシクロザニド(oxyclozanide)、トリブロムサラン(tribromsalan)、ブロムフェノホス(bromofenofos)などがあります。
 
 
これらの薬物はいずれも体内消失が速やかで1ヶ月後の再投与が必要です。
 
 
これらの薬物のうちブロムフェノホスは後期の幼虫にも有効です。
 
 

その他の吸虫類の駆虫薬

 
 
肝蛭以外で病害が問題になる吸虫は反芻胃内の吸虫と、犬猫の肺吸虫です。これらの疾病の治療に使用経験がある薬物はビチオノールです。

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