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骨折の治療 ~ ワイヤーによる固定・骨接合術(内固定法)の実施上の問題

骨折の治療 ~ ワイヤーによる固定・骨接合術(内固定法)の実施上の問題 骨折

 
 

ワイヤーによる固定

 
 
膝蓋骨の骨折、若い犬の肩甲骨の骨折、犬の下顎結合の離開骨折などの治療には、ワイヤー(wire)による固定が行われます。
 
 
しかし、長骨の骨折に対するワイヤーの固定効果は確実でないことが多いため、一般にワイヤー縫合のみで固定することは少ない。
 
 
骨折面の長い斜骨折・螺旋骨折などの際に、pinningあるいはplatingを補強する目的で、ワイヤーによる全周縫合(encerclage wiring)、半周縫合(hemicerclage wiring)、または穿通縫合(orthopedic wiring)が補助的にほどこされます。
 
 
またそれらの固定操作の間に、整復した骨片を一時的に保持する手段として応用されることもあります。
 
 
尺骨頭、大転子および踵骨隆起に生じた骨折は、筋・腱の牽引作用によって骨片が離開しやすいため、特にワイヤーによる締結(tension band wiring)の固定効果がすぐれています。
 
 
これは挿入したKirschnerワイヤー、Rushピンまたは骨ネジを利用して、骨片の圧着をはかる術式です。
 
 

骨接合術(内固定法)の実施上の問題

 
 

手術の時期

損傷が生じた組織に侵入した細菌は、侵入後6~8時間を経過すると増殖を開始します。また細菌感染に対する組織の抵抗力は、受傷後15時間以降は急速に低下して、感染が成立する危険が高まり、第3日に、そのピークに達します。
 
 
したがって、創傷感染に対する処置は、6時間以内に開始するのが理想的です。
 
 
一方、骨折部の腫脹は24時間後には最大になり、また筋の拘縮は24時間以後著明になります。したがって、骨折の整復は第1日には容易であり、第2日ないし第3日には、なお比較的小さい力でも可能ですが、第5日になると、非常に強い力が必要になって整復操作の間に周囲の組織をいためることになります。
 
 
これらの点をあわせ考えると、手術の条件は、受傷後第1日、特に15時間以内が最良であり、第2日(せいぜい第3日)まではなお良好ですが、第4日以降は悪化し、第10日にはきわめて不良になります。
 
 
複雑骨折の場合に、骨接合術をただちに行うことが適当かどうかについては、見解がかならずしも一致していません。
 
 
骨折時に生じた災害創の治療と同時に骨接合術も行うという考えと、災害創の治癒を待って骨接合術を行うほうが安全だとする考えとがあります。

 
 

骨片の処置

手術の操作によって、組織の損傷を拡大することがないように、骨折端、骨片、軟部組織の取り扱いは穏やかでなければなりません。
 
 
遊離骨片は、血管のつながりを切断しないように気をつけます。すでに血管が切断されていても、無菌状態の骨片ならば、それらはいったん壊死に陥るけれども、しかし骨折部の再建の枠組みとし役立ちます。
 
 
つまり、それらは一種の自家移植片であって、血管分布が再現して、血液循環が再開されると吸収され、最終的には新しい骨におきかわります。
 
 
非常に小さい骨片は、骨折端の間隙に嵌め込む。また大きい骨片は互いに圧着ネジで固定して、最終的には骨全体を2個の骨片にまとめ、それをプレート(中和プレート)で動かないようにします。
 
 
これらは骨の治癒に役立ちます。中間の大きさの骨片はむしろ処置が難しく、二次的合併症の原因になることがあります。すでに壊死に陥り、あるいは汚染が著しく腐骨(sequestrum)となった遊離骨片は除去します。骨片を除去したあとには、海綿質の自家移植を行って、欠損を埋めます。

 
 

骨の血液供給

長骨の単純な骨折でも、遠位骨片の栄養動脈からの血液供給は途絶することが多いから、骨幹端動脈、骨端動脈および骨膜動脈からの血液供給を、できるだけ温存しなければなりません。
 
 
骨端板による骨の成長が営まれている若い動物では、特にこの点に注意します。
 
 
髄内釘の挿入による骨髄の血管の損傷は、骨プレートの装着時よりも著しく、骨幹端動脈からの血液供給の障害もおこるから、骨膜の保存が特に大切です。
 
 
手術中に骨膜を剥離しないように注意します。損傷のため、あるいはプレート装着の際に骨膜が剥離した時には、術創を閉鎖する時に、周囲の軟部組織とともに縫合して骨表面に接着させます。
 
 
ただ、小さい骨では、プレートを骨膜下に挿入することが困難なので、通常は骨膜上に装着します。

 
 

髄内釘の太さ

髄内釘はなるべく、骨折部の近位または遠位で骨の内壁に密着する太さのものを選びます。また先端を骨幹端の骨組織にしっかり刺入する必要があります。
 
 
しかし大型犬あるいは牛、馬の骨では、適当な太さの髄内釘の入手が困難なので、やむを得ず骨の内径より細いものを使うことが多いため、一般に骨片の旋回転位が避けられない。
 
 
髄内釘によって、骨片の転位を十分に防止できない時には、骨ネジか骨プレート、または両者の併用による固定に切り替えます。

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