馬の心疾患(heart diseases of the horses)
馬は、競走馬、乗馬、輓馬、農耕馬などその用役が異なっても、常に労働が要求されるため、心臓機能のすぐれたものが起用されています。不幸にして心疾患が発見された時は、経済的に治療の対象からはずされる場合が少なくない。
また、人や犬などにくらべて、馬の心疾患の病態生理や診療に関する業績は少ない。
馬の先天性心疾患について、Lilleegen(1934年)は、26頭の症例に28種の先天性心疾患を認め、その内訳は、心室中隔欠損(13)、半月弁欠損(4)、総動脈幹開存(3)、房室弁欠損(3)、右房室口閉鎖(1)、僧帽弁血液嚢腫(1)、心房中隔一次開存(1)、二腔心(1)、重複前大静脈(1)であったと述べ、なお、このほか種々の弁異常、動脈管開存、ファロー四徴症などが報告されています。
剖検によって診断された後天性心疾患には、心膜炎、創傷性心膜炎、心膜破裂、心筋炎、心筋梗塞、心臓破裂、心内膜炎などの症例が報告されている。
とくに興味深いのは、心臓破裂34例のうち、その発生率のもっとも高いのは、右室(15)で、次に左房(8)、右房(7)、左室(3)、心室中隔(1)の順で、これによって左室の強靭なことがうかがえる(Leonhardt,1923)
実際の競走馬や乗馬における心異常のうちで、もっとも報告の多いものは不整脈に関するもので、不整脈は、馬の12~18%にみられると考えられている。
Norr(1913)、Brooijmans(1957)およびHolmes(1968)は、いずれも多数の馬の不整脈心電図を報告しています。これらの不整脈のなかで、臨床上注目されているのは、心房細動と不完全房室ブロックで、前者は運動能力が著しく阻害されたためであり、また後者はもっとも頻繁にみられるからであると述べている。
心房細動の発生頻度については、Else and Holmes(1971)は2.5%と報じ、不完全房室ブロックについては、Holmes and Alps(1966)およびSmetzer et al.(1969)は12~18%であったと報告している。

