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心臓の疾患 ~ 先天性心疾患

心臓の疾患 ~ 先天性心疾患 心臓・血管およびリンパ系の疾患

 
 

先天性心疾患(congenital heart diseases)

 
 
家畜における先天性心疾患は、各種動物にみられますが、犬および猫以外のものでは、経済上の理由からほとんど治療の対象とされていない。
 
 
したがって、ここでは現在もっとも研究され、診療の機会が多い犬の先天性心疾患について記載します。
 
 

犬の先天性心疾患(congenital heart diseases in dogs)

 
 
犬における先天性心疾患の発生率は、その母集団を確定することが困難なため、疫学的報告は少ない。Pattersonは、臨床例をもとにして、その発生率は0.68%と述べ、Mulvihill & Priesterは、剖検例から、0.46%であったと報告している。
 
 

1.先天性心疾患の発生率は、純粋犬のほうが雑種犬に比べて高い。
2.発生率の高い犬種

動脈管開存症:プードル、ポメラニアン、コリー
肺動脈弁狭窄症:イングリッシュブルドッグ、チワワ、フォックステリア
ファロー四徴症:キースホンド
大動脈弁狭窄症ジャーマンシェパード、ボクサー、ニューファウンドランド
右大動脈弓遺残ジャーマンシェパード、アイリッシュセッター

 
 
犬における先天性心疾患のタイプは、Pattersonらにより、25種が報告されており、通常多くみられるものをあげると、動脈管開存症、肺動脈弁狭窄症、大動脈弁狭窄症、右大動脈弓遺残、心室中隔欠損症、ファロー四徴症、卵円孔開存症などがあり、これらの発生は、すべての約70%を占めている。
 
 
またPattersonらは、犬には先天性心疾患を発生しやすい系統があることを疫学的調査により明らかにし、さらに交配実験によって、遺伝子が関与することを示唆している。
 
 
また遺伝子によって規定された奇形と、それによって変化した胎児期の心形成過程における血行動態を重要な因子として述べている。
 
 
Jamesは、一系統内に集積された刺激伝導障害例を報告しているが、その原因については明確にしていない。
 
 
先天性心臓疾患は、いったん出来上がってしまうと、その根治が非常に難しいので、その原因の解明と発生予防の確率がのぞましいのです。
 
 
(ⅰ)動脈管開存症patent ductus arteriosus(PDA):動脈管は主肺動脈が左右の肺動脈に分枝する部分と大動脈を結んでいた血管(Botallo)で、生後はすみやかに閉鎖するが、開存している場合は、これを動脈管開存症という。
 
 
(ⅱ)心室中隔欠損症ventricular septal defect(VSD):心室中隔欠損症は、中隔が全欠損のこともあり、また部分欠損の場合もある。
 
 
(ⅲ)卵円孔開存症patent foramen ovale(PFO):卵円窩(FO)の前縁と静脈間隆起(IVT)との間は弁状で、生後、左房圧の上昇により閉鎖する。
 
 
正常犬でも最小深子が通るくらいの小さな穴が開存していることがある。心房中隔欠損症atrial septal defectは、このFOの部位でもっとも多くおこる。
 
 
(ⅳ)ファロー四徴症tetralogy of Fallot(TOF):本症は、肺動脈狭窄、心室中隔欠損、大動脈右方偏位(中隔への騎乗)および右心室肥大の4病変を伴った心奇形です(Fallot1888)。
 
 
犬または猫で、生後数か月ないし、1年未満のものに発見される。発育が年齢にくらべて遅れ、運動によって呼吸困難や失神およびチアノーゼを招く。
 
 
舌や粘膜が黒色あるいは暗色を呈し、いわゆる赤血球増加症は本症の特徴の一つです。
 
 
症状と診断:一般に先天性心疾患をもつ犬では、生後の発育成長が他の同胎犬にくらべて悪く、また運動能力の劣るものが多い。したがって、稟告の聴取を注意深く行い、また系統の調査をあわせて行う必要がある。
 
 
障害の部位によって異なるが、いずれも特徴的な雑音が聴取される。この所見は臨床診断上重要です。また重度のものでは、呼吸促拍や困難およびチアノーゼを現し、発育が阻害される。
 
 
一般に犬の先天性疾患は、生後2~3ヵ月頃すなわちワクチン接種時に発見されることが多い。
 
 
稟告と聴診などによって、先天性心疾患が疑われた犬については、心電図、心音図の検査および胸部X線撮影を行い、さらに心臓カテーテル検査(心内圧、酸素飽和度の測定、選択的心臓血管造影など)によって局所障害の確定や合併奇形の存在を確認する必要があります。
 
 
治療法:現在、犬の先天性心疾患の外科的処置(開胸式心臓手術cardiac operation)では、とくに心内修復(開心術)を必要としない動脈管開存症および右大動脈弓遺残(食道狭窄)は、術式も確立し、良い手術成績が得られています。
 
 
一方、心内修復を必要とする心室中隔欠損症や肺動脈弁狭窄症、大動脈弁狭窄症、ファロー四徴症では、開心術による根治が試みられていますが、まだ一般的に用いられていない。
 
 
しかしながら、これらの疾患でも、姑息的治療すなわち、短絡手術shunt operationが臨床的に用いられています。なお、上記の外科的処置のほかに平行して、食事療法や運動制限および心不全に対する強心配糖体、抗不整脈薬、利尿剤などの系統的な投与が必要です。

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